新聞記事を見た途端「ダメダこりゃ」と呟いてしまった。岸田内閣の看板政策である「新しい資本主義」の実行計画が発表された。その内容が今朝の新聞で報道されている。項目は多義にわたるが目新しいものがほとんどない。昨年の総裁選でぶち上げた分配政策を軸にした「新しい資本主義」なるものの影も形もない。あるのは子役人が積み上げた技術論や修正論ばかり。大将として日本経済を成長路線に導く“主導力”のカケラもない。コロナのピークアウトやロシアのウクライナ侵略で、岸田内閣の支持率は意外なほど高い。参院選を前に自民党はほくそ笑でいることだろう。だが有権者を甘く見ない方がいい。総裁選で自ら掲げた政策を遂行できない首相に日本を託せるのだろうか。こんな国民の“不安な思い”に今こそ野党はつけこむべきだ。だが、そんな野党も見当たらない。ここに日本が陥っている隘路がある。

日経新聞の上級論説委員/編集委員である小平龍四郎氏は以下のような指摘をしている。「そうこうしているうちに、タイやマレーシア、インドなど東南・南アジアの新興国がどんどん追い上げ、市場の質という面では遜色ないところまできています」。実行計画の柱の一つは金融市場の活性化だが、それすらもおぼつかないとの指摘だ。そりゃそうだろう。柱である人への投資の具体策は「少額投資非課税制度(NISA)」や「個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)」の拡充強化だ。それも年末までに具体策を決めるとある。これが「資産所得倍増プラン」なるものの正体なのだ。宏池会の会長でもある岸田首相は常々、「所得倍増計画」を実行した大先輩の池田勇人元首相に対する尊敬の念を口にしている。「所得」が「資産所得」に入れ替わっているが、国民のフトコロを豊かにする政策を推進すると強調してきた。

日経新聞によると実行計画の柱は4つ。①人への投資②科学技術③スタートアップ(新興企業)④脱炭素・デジタル化―だ。いずれもすでに俎上に登っているテーマだ。分配政策という文言はどこにもない。①の「人への投資」に吸収され少額投資非課税制度や個人型確定拠出年金の拡充強化に置き換わっている。だが二つとも所得が増えないと利用できない制度だ。日本経済が低迷している主因は、総需要の大半を占めている家計の困窮にある。家計の属性を所得階層別に分類すれば、おそらく大半は生活が苦しい低所得者層だろう。個人金融資産は約2000兆円に達しているが、所有しているのは圧倒的少数の裕福層だ。「貯蓄から投資へ」という古めかしい命題を引っ張り出して「人への投資」を強調すること自体、時代遅れの現状認識というべきかもしれない。はっきり言って岸田政権、このままでは“ジ・エンド”ということだ。