ウクライナ戦争を機に西側諸国とロシアの対立が鮮明になっているが、ロシアを陰に陽に支援する中国はB R I C S の勢力拡大を通して西側諸国と対抗する戦略のようだ。ドイツで開かれるG7に対抗する形で23日に開催されたB R I C Sの首脳会議(オンライン会議)、主宰者である習近平主席は挨拶で「冷戦的思考や集団的対抗を排し、一方的な制裁や制裁の乱用に反対する」(日経新聞)と反西側諸国の姿勢を鮮明にした。ウクライナ戦争についても「実力に基づく地位を妄信して軍事同盟を拡張し、他国の安全を犠牲にすれば必然的に(自国の)安全も苦しい立場に陥る」(同)と、米国ならびの北大西洋条約機構(NATO)を批判。ロシア擁護の姿勢を鮮明にした。この発言がB R I C S 首脳会議で行われたことにまず注目すべきだろう。
B R I C Sと似た言葉にB R I C sというのがある。2000年代に著しい経済発展を遂げた4か国(ブラジル、ロシア、インド、中国)を総称してこう呼ぶ。ウキペディアによれば、投資銀行であるゴールドマン・サックスが2001年11月30日に投資家向けのレポートでこの言葉を使った。当時は新興国と呼んでいた気がする。G7に代表される先進国を追いかける存在として注目されていた成長著しい4カ国だ。2011年に中国で行われた首脳会議からこれに南アフリカ加わった。ここからいまの5カ国によるB R I C Sがスタートした。最近この言葉はあまり見かけなかった。米中対立の影に隠れていたのかもしれない。そのB R I Cの首脳会議を中国はロシアに対する制裁強化を話し合うG7にぶつけるように開催した。
G7対B R I C S 、対抗軸としては絵になりそうな組み合わせだ。日経新聞によると習主席はこの会議で、「志を同じくする仲間が一日も早くBRICSに加入できるようにすべきだ」(日経新聞)と述べ、加盟国の拡大に意欲をみせたという。ロシアに対する経済制裁を強化するG7。B R I C Sはこの動きをロシアとの貿易拡大で対抗しようとしている。5月に中国が輸入したロシア産原油の輸入量は1年前に比べ1.5倍に膨らんだ。インドも急増させている。西側諸国の切り札ともいうべきロシアへの経済制裁、プーチンが「失敗だ」と断言する裏にはB R I C Sがある。B R I C Sの拡大は西側にとって脅威だろう。これが習主席の腕力か、G7がやや押され気味のようにもみえる。だがその中国は最近、外務省でロシア外交を支えてきた楽玉成外務次官を更迭した。西側にとって救いは、中国もロシアも一枚岩ではないことか・・・。
- 投稿タグ
- 国際政治