【マドリード=酒井圭吾、梁田真樹子】スペインの首都マドリードで開かれていた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議は6月30日、ロシアの侵略を受けるウクライナへの長期的支援を確認し、閉幕した。会議では、ウクライナ軍兵器の近代化を図る「包括的支援策」も決定した。29日に採択された首脳宣言では、新規加盟による同盟拡大を継続し、権威主義国に結束して対抗する欧米の意思を強調した。

 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は30日、会議総括の記者会見で「NATOとロシアが対決すれば、待っているのは破滅だ。だから我々にはウクライナを全面支援し、状況の悪化を防ぐ必要がある」と支援の重要性を訴えた。

 「包括的支援策」では、ウクライナ軍の兵器や装備の刷新が柱となる。旧ソ連の兵器を主力としていることから、軍事支援による最新兵器の実戦配備に時間を要し、欧米基準と適合する砲弾や弾薬も限定されていた。ストルテンベルグ氏は29日、「長期的視点でウクライナ軍の近代化を図り、NATOとの相互運用性を高め、防衛能力強化を支援する」と述べていた。

 東欧でも旧ソ連の兵器を配備する国が多く、NATO全体の兵器近代化を進めることも確認した。NATOは欧州東部の防衛体制強化も決めている。加盟国間での兵器の相互運用性を高めることで、防衛戦略の効率化を図る。

 30日には、加盟国から10億ユーロ(約1400億円)を募る「NATO革新基金」の署名式も行われた。人工知能(AI)などを開発する民間企業に投資し、ロシアや中国が進める最新技術の開発への対抗を図る。

 首脳宣言では「NATOは門戸の開放を続ける」と強調した。スウェーデンとフィンランドの新規加盟も承認し、正式な手続きを進めることも盛り込んだ。加盟を希望するボスニア・ヘルツェゴビナやジョージア、ウクライナと隣接するモルドバの防衛能力を高める支援の推進も明記した。

 米国のバイデン大統領は閉幕後の30日の記者会見で、最新鋭防空ミサイルシステムを含めた8億ドル(約1080億円)相当のウクライナへの追加軍事支援を数日中に発表すると明らかにした。