財務省はきのう、2021年度の決算を発表した。日経新聞は「企業の業績回復を背景に税収は67兆円と2年連続で過去最高額を更新した。税収は好調だが、新型コロナウイルス対策の予算が膨らみ、歳出の半分を賄えない状況が続く。経済対策の規模を優先した予算編成の結果、借金として重くのしかかり、将来世代の負担となる」と書いている。税収が過去最高になったことを喜んだ途端、この記事の主眼は財政赤字の拡大に焦点が移り、「借金として重くのしかかり、将来世代の負担となる」と警告を発する。一般紙ならいざ知らず、経済の専門紙である日経新聞にしてこのストーリーである。正直言ってがっかりした。読みたかったのは将来の心配ではない。過去最高を2年連続で更新した要因である。

同紙が税収増の要因として指摘するのは「企業業績の回復」だけである。その結果、税収の柱で「基幹3税」と呼ばれる所得税、法人税、消費税の収入がいずれも伸びた、とある。あとは税収額の羅列だけ。税収は伸びているものの、コロナ対策を中心に歳出はそれ以上に伸びており、財政は一段と悪化。後世に「負担となる」と結論付けている。一般的に新聞記事というのは、ます記者が原稿を書き、デスクがチェックする。その上で編集局幹部が掲載するか否かの判断をする。紙面に載るまで大きく分ければ3つのプロセスがある。それぞれの過程で記事の狙い、中身、表現などが審査され、最終的に紙面化される。要するにわれわれが目にする記事は、記者個人の視点というよりも新聞社としての価値判断が加味されているということだ。この記事に限って言えば日経新聞は税収が2年連続で過去最高を更新したことよりも、「後世の負担が増えたこと」を問題視しているということになる。

バブル崩壊以降日本の税収は50兆円台前半で増減しており、慢性的な税収不足に陥っていた。その税収がコロナ禍で2年連続急増した。コロナを筆頭にさまざまな要因で歳出も増えており、税収が増えたからといって単純に喜べないのはよくわかる。とはいえ、何十年も増えなかった税収が増え始めたのだ。消費増税した14年度のように単年度だけなら特別な事情によるも可能性もある。だが、2年連続となれば経済の構造に何がしかの変化が起こっているのではないか、そう考えるのが普通だろう。個人的には税収増をもたらす経済構造への改革が、日本中を覆っている閉塞感を打開する近道ではないかと考えている。昨年は基幹3税がいずれも増えている。コロナ禍でこの2年、国民生活は決して楽ではなかった。法人税が増えるのは理解できるとしても、どうして所得税も消費税も増えたのか。そこを分析すれば日本経済復活の条件も見えてきそうな気がする。