[フランクフルト 29日 ロイター] – かねて欧州中央銀行(ECB)の債券購入に異論を唱え続け法廷闘争を繰り広げてきたベルリン工科大学のマルクス・ケルバー教授(公共経済学)が、域内金利差拡大を受けて発表された新たな債券購入スキーム「伝達保護措置(TPI)」はイタリアなど重債務国への「露骨な」援助と批判し、またもや法的措置を取ることを検討している。
TPIは、ECBの金融政策をユーロ圏にあまねく伝達するのを阻む市場の無秩序な動きに対抗する措置で、財政規律の順守などを条件に市場で逆風を受けている国債をECBが買い入れる制度。買い入れ規模は「事前の制約はない」としている。
ケルバー氏はロイターのインタビューで、無制限の国債購入は域内最大の債務国イタリアの救済が主な目的で、ECBが国家に融資することを禁じた欧州連合(EU)の規則に違反すると指摘。
「ECBは公然と国債の引き受け手になる。これはあからさまな国家への融資だ」と述べた。
TPIでの購入は「無効」とされる可能性があるとし、TPIを巡り申し立てをするか顧客と協議していると説明した。
ケルバー氏は、各国間の借入コストが過度に乖離していると判断すればECBは介入しなければならないというTPIの規定は、自由な競争を支持するEUの方針に反すると主張。
ドイツ、フランス、オランダ各国国債の償還資金の一部でイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ各国国債を購入し、金利差拡大に歯止めを掛けるというECBの決定も批判した。
「イタリアとドイツの利回り差が2%ポイント以上なのは不当とECBが言うのなら、ECBが市場に取って代わろうとしていることになる。ECBはどうやって判断するのか」と述べた。