[東京 2日 ロイター] – 三井物産と三菱商事は2日、極東ロシアの石油・天然開発事業「サハリン2」の資産価値をそれぞれ1366億円と811億円減額したと発表した。5月に引き下げたばかりだが、プーチン大統領が6月末に事業主体をロシア企業に変更する大統領令に署名したことで、事業の先行きに不透明感が増した。

三菱商事の野内雄三・最高財務責任者(CFO)はこの日の決算会見で、大統領令でサハリン2の投資に関わる「不確実性が高まった」と説明。自己資本が7兆円を超えることから、「財務的なインパクトは限定的」とした。同日に決算を発表した三井物産の重田哲也CFOも、「大統領令が明らかになっておらず、保守的に見積もった。損益やキャッシュフローには影響しない」と述べた。

サハリン2には三井物産が12.5%、三菱商事が10%出資する。プーチン大統領は6月30日、権益などを引き継ぐ新たな事業体を設立する大統領令に署名。国営ガス大手のガスプロム以外の出資者は、新会社の設立後1カ月以内にロシア政府に対し改めて権益の承認を申請する必要がある。詳しい条件は明らかになっていない。

両社は5月にも、ロシア国債の格付け引き下げを受けて割引率を見直し、サハリン2の資産価値を三井物産が806億円、三菱商事が500億円減額した。今回の追加措置で投資残高はそれぞれ902億円、622億円となった。三菱商事の野内CFOは「今後も状況に応じて価値を変動する可能性がある」と述べた。

日本は液化天然ガス(LNG)の約9%をサハリン2から輸入している。政府は権益維持を目指す方針で、7月下旬に訪米した萩生田光一経産相は米側に改めて伝えた。

三井物産の重田CFOは「大統領令の中身が明らかになり次第対応する。何らかの影響を受ける可能性がある。詳細を待っている状況」と述べた。そのうえで、北極圏のガス開発事業「アークティック2」を含め、「日本政府や事業パートナーを含むステークホルダーとも協議のうえ、適切に対応する」と語った。

(浦中美穂 編集:久保信博)