きょう(10日)岸田総理は内閣改造を行う。注目された布陣は昨夜までにすべて決着、今朝の新聞には新閣僚の一覧表が掲載されている。スムーズな組閣というべきか、メディアの評価もまずまずのようだ。個人的にはメンバーそのものよりも、組閣に至った背景、閣僚や党役員の人選の経緯、自民党内の評価に関心があるが、それはこれからのテーマ。とりあえずはメディアがあまり伝えない2つの陰と一つの影に注目してみた。一つがいまはなき安倍元首相の陰、ついで旧統一教会の陰、そして最後は菅前首相の影だ。こちらは陰ではなく影響力という点で影と表現する。2つの陰と一つの影に気を取られたせいか、いつものように女性の登用が少ない。閣僚19人のうち初入閣は9人とまずまずだが、女性登用は内閣が2人、党4役はゼロ。ジェンダーギャップが修正できない日本の後進性が今回も遺憾なく発揮された。

さて2つの陰と一つの影だ。まずは陰から。きょう午後3次から旧統一教会が記者会見を行う。組閣の当日だ。何を話すのかわからないが、異例の会見と言っていいだろう。岸田首相が統一教会の排除にこだわった今回の組閣、裏で何かが蠢いているのだろう。その結果が昨日決まった人選だ。個人的な難航予想に反して人選は順調だったようだ。これまでに旧統一教会との関係が表面化した8人のうち山際経済財政・再生相以外は閣外に去った。一人(萩生田氏)は党の要職で起用されたが、残る6人は再任されなかった。山祭氏との違いはなんだろう。統一教会排除は徹底されなかった気がする。「(俺は)骨格ではないのか」と不満を表明し、留任を希望した萩生田氏は政調会長に横滑り。これは安倍氏の陰か。安倍派に配慮しながら同派の松野官房長は骨格で早々に留任が決まっていた。

安倍派所属のメンバーは内閣で5人、党で1人が採用された。安倍派厚遇は変わらない。ただし骨格待遇は松野氏。後継争いで一歩リードか。少なくとも岸田総理の安倍派に対する意思は明確になった。これが安倍派分裂につながるか、要は今後の実績次第だろう。もう一つは影だ。菅前首相の影響力が大きくなりそうな気がする。重要閣僚への起用説も取り沙汰されたが、本人は頑なに拒否したと解説されている。反面、麻生派の河野太郎氏がデジタル相に起用された。デジタル庁は菅氏のレガシー。総理が掲げる新しい資本主義との関連も強い。河野氏の起用は麻生派というよりも菅派の人事だろう。盟友である森山氏は選挙対策委員長に起用された。名簿に名前はないが菅氏の影が見え隠れしている。安倍氏亡き後、岸田総理の裁量権は増大するはずだ。だが、表立って目立たない菅氏の、ステルスのような影響力が立ちはだかる。岸田改造内閣、強いようで弱いかもしれない。