[東京 10日 ロイター] – 第2次岸田改造内閣が10日、発足した。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題などを巡って支持率が低下する中、教会との関係を認めた7閣僚を含め、全19閣僚のうち14ポストを入れ替えた。一方で鍵となるポストに経験者を起用するなど、実務を重視した布陣で、焦点だった防衛相には浜田靖一氏を再登板させた。

<政策断行内閣>

今回の内閣改造について岸田文雄首相は「骨格を維持しながら有事に対応する政策断行内閣として山積する課題に対し、経験と実力を兼ね備えた閣僚を起用することにした」と、同日夕の記者会見で述べた。

現閣僚のうち、旧統一教会や関連団体との関係を認めた岸信夫防衛相、末松信介文部科学相、二之湯智国家公安委員長、小林鷹之経済安全保障担当相のほか、野田聖子地方創生担当相、山口壮環境相、萩生田光一経済産業相らを閣僚から外した。

防衛相には浜田氏を起用した。同氏は2008年9月から約1年にわたり麻生内閣で防衛相を務めた。安全保障環境が厳しさを増す中、近く改定する国家安全保障戦略などの3文書をどう扱うかが注目される。厚生労働相にも過去に同相を務めた経験がある加藤勝信氏を充てた。

「旧統一教会の問題で内閣支持率が大幅に低下し、支持率を食い止めることが人事の時期を早めた大きな理由で、統一教会と関係のある7人の現職閣僚を外したのが特徴」と、元自民党職員で、政治評論家の田村重信氏は指摘。「具体的な政策を推進するのに必要なそれなりな布陣になっている」と語る。

岸防衛相は、旧統一教会の関係者から選挙活動の支援を受けていたと明らかにしていた。末松文科相は教会関係者による「パーティー券購入の事実がある」と言及。二之湯国家公安委員長は7月26日の閣議後会見で、2018年に関連団体が開催したイベントの京都府実行委員会で委員長を務めていたことを明らかにした。

関連団体での会合でのあいさつや、過去に祝電を送った閣僚も相次ぎ、内閣改造に先立つ9日、岸田首相は「当該団体との関係について自ら点検し、厳正に見直していただくことが新閣僚、党役員においても前提となる」としていた。

複数の政府・与党関係者によると、当初は9月上旬の内閣改造・党役員人事を想定していた。

閣僚経験者では自民党の高市早苗政調会長を経済安全保障相に起用し、経済産業相に西村康稔氏、デジタル相に河野太郎氏を改めて入閣させた。交代する14人のうち、5人が再入閣となる。

第2次岸田改造内閣で初めて入閣するのは、総務相に就く寺田稔首相補佐官や文部科学相の永岡桂子氏、環境相の西村明宏氏ら9人。一方、林芳正外相や鈴木俊一財務相、山際大志郎経済再生相ら5人が留任となった。

寺田稔氏が務めてきた国家安全保障に関する重要政策や、核軍縮・不拡散問題担当の首相補佐官には岸信夫防衛相を充てた。

内閣改造に先立ち、自民党は麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長を留任とし、政調会長に萩生田経産相、総務会長に遠藤利明選対委員長、選対委員長に森山裕総務会長代行を充てる人事を正式に決めた。

就任会見で旧統一教会との関係を問われた萩生田氏は「今後は主催団体や会の在り方をしっかり見て、会の出席などについては慎重な対応をしっかりとっていきたい」と語った。政調会長としての最重要課題は「外交安保政策の強化」とし、自民党が公約に掲げる防衛力の増強を早急に実行に移す考えを示した。

<国葬境に抱える火種>

岸田首相が21年10月に発足させた最初の内閣では、総裁選で訴えた若手や女性の起用も含め「老・荘・青」のバランスを取った。今回の内閣改造では再入閣も含め、ベテランの起用に傾いた。

第2次岸田改造内閣では、公明と無派閥を除き安倍派4、岸田派3、麻生派4、茂木派3、二階派2の布陣とし、「派閥均衡型」で挙党一致体制の構築を狙う。

もっとも、思惑通りに政権求心力を維持できるかは見通せない。「旧統一教会が記者会見を内閣改造の日に合わせてきた。重ならないように調整するのが自民党幹事長の仕事のはずだができていない。旧統一教会の根は深く、やがて火を噴くかもしれない問題などを抱えて、挙党一致、党内融和は遠い」と、政治評論家の原野城治氏は言う。

原野氏は、萩生田経産相を政調会長に就けたことで「派閥の遠心力が働くだろう。国葬を境に、安倍派の分裂騒動、さらなる党内抗争を誘引しかねない火種を抱えた人事と言える」と指摘する。

(ポリシー取材チーム 編集:石田仁志)