[キーウ(キエフ) 16日 ロイター] – ウクライナ南東部でロシアに占拠されているザポロジエ原子力発電所のウクライナ人技術者がロイターのインタビューに応じ、緊迫した労働環境を証言した。 

ザポロジエ原発を巡ってはロシアとウクライナが互いに砲撃したと非難している。技術者はロシアによる大きな圧力に直面しているが、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発のような惨事が起こらないようにするために残っていると述べた。

技術者は、ロシアの報復を恐れて身分を明かさないことを条件にインタビューに応じた。多くの作業員が家族を原発のあるエネルホダル町から避難させたが、原発の安全な運転のために自分たちはとどまったという。

「1986年のチョルノービリのような大惨事が起こればもっと大変なことになる可能性があるため働かなければならない」と説明。原発には重装備のロシア兵が至る所におり、作業員が勤務を終えてもすぐに帰宅させないこともあるという。

「彼らは砲撃など、(作業員を)外に出さない理由を見つける」と指摘。「彼らは常に銃を持って敷地内を歩き回っている。精神的、心理的にとても負担がかかる」と語った。

ロシア国防省からは今のところコメントを得られていない。

ロシアの侵攻開始前、ザポロジエ原発には1万1000人の職員がいた。ウクライナ当局は安全保障上の理由から、現在何人いるか公表していない。

技術者は、原発への送電が断たれることを常に心配していると述べた。炉心と使用済み燃料プールを冷却するポンプが機能するためには電気が必要なためだ。ディーゼル燃料を使う予備の発電機はあるものの、現場にどれだけのディーゼル燃料が残っているか分からないという。

原発の町、エネルホダルは侵攻前は5万人余りの人口を抱えていた。町長はロイターに「いま残っているのは2万5千人ほどだ」と語った。

ウクライナ国営原子力企業エネルゴアトムの広報はロイターに、7月までに約1000人の原発職員が町を離れたと述べた。職員の家族に関するデータはないと説明した。

技術者によると、6基の原子炉のうち現在機能しているのは2基。それでも安全維持のための作業は膨大だとした。

「運用を維持するために、職員は戻ってきた。ウクライナ、欧州大陸、そして世界の安全が脅かされているからだ」と語った。

国際原子力機関(IAEA)はザポロジエ原発に査察団を送る用意があるとしている。

しかし技術者は査察団の訪問が事態打開の助けにならないと指摘。

「町、原発、火力発電所、ザポロジエ州、ヘルソン州がロシア占領下から脱して初めて、人々が安全に暮らせるようになる」と語った。