[上海/香港 22日 ロイター] – 中国人民銀行(中央銀行)は22日、銀行貸出金利の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)を引き下げた。引き下げ幅は住宅ローン金利の基準となる期間が長めの金利を大きくした。先週に続く金融緩和措置で、不動産危機や新型コロナウイルスの感染再拡大に見舞われている景気を下支えする。
1年物LPRは5ベーシスポイント(bp)引き下げて3.65%とし、5年物LPRは15bp下げて4.30%となった。1年物の引き下げは1月以来、5年物は5月以来。
ロイターが先週実施した調査では、回答者30人中25人が1年物LPRの10bp引き下げを予想。30人全員が5年物の引き下げを予想し、10bpを超える幅を見込む人が9割に上った。
人民銀は景気支援で難しいかじ取りを迫られている。過度な刺激措置はインフレに拍車をかけるとともに、米国などの引き締め政策との比較から資本流出を招くリスクを伴う。ただ、資金需要が弱いため、景気の安定維持に向け金融緩和を続けざるを得ない状況となっている。
キャピタル・エコノミクスの中国エコノミスト、Sheana Yue氏は「全体として人民銀の最近の発表からは、政策は緩和されているが大幅ではないという印象を受ける」とし、「われわれは年内に政策金利の10bp引き下げがあと2回あると予想し、来四半期の預金準備率(RRR)引き下げも見込んでいる」と述べた。
人民銀は15日、1年物中期貸出制度(MLF)の金利を予想外に引き下げた。同時に7日物リバースレポの金利も引き下げた。
中国のほとんどの新規・既存融資は1年物LPRに基づいており、5年物LPRは住宅ローン金利に影響する。LPRはMLF金利に緩やかに連動している。
貸出金利の引き下げを受けて香港市場に上場する中国の不動産開発会社は1.7%上昇し、本土市場の不動産株も比較的安定した動きとなった。
ただ、他の主要国との政策乖離を巡る懸念から、人民元は約2年ぶり安値に下落し、1ドル=6.8232元付近で推移している。
<試練の時>
先週発表された7月の主要経済指標は総じて低調で経済の減速が鮮明となった。これを受け、ゴールドマン・サックスや野村など大手投資銀行が今年の成長率予想を引き下げた。
今回、住宅ローン金利に連動する5年物をより大きく下げたのは、開発業者が相次ぎ債務不履行(デフォルト)に陥り、住宅販売が低迷する不動産セクターを安定化させようとする当局の意図が透ける。
ロイターは先週、規制当局が国有金融保証保険会社に、一部の民間不動産開発会社が発行した国内債を保証するよう指示したと報じた。
ANZの中国シニアストラテジスト、Xing Zhaopeng氏は、LPRの引き下げ幅は資金調達需要を刺激するには不十分だと指摘し、1年物金利がさらに下げられる可能性があると述べた。
ゴールドマン・サックスのエコノミストも一段の緩和を予想したが、人民銀は試練の時を迎えており、食品価格の上昇や先進国の金融引き締め策の波及効果を受ける可能性を踏まえ、追加利下げを急がない可能性があると分析した。
これとは別に人民銀は22日、国有銀との会合を主催し、主要金融機関は総融資額の安定した伸びを維持し、不動産部門の合理的な資金調達ニーズを守るために先頭に立つべきとの声明を発表した。
この会合では金融機関に対し、ネットワークインフラやプラットフォーム経済など鍵となる分野に向けた金融支援を強化するよう要請があったという。