地球温暖化などの影響で富山湾の海水温が上昇し、富山県内の各漁港では水揚げされる魚種に変化が出ている。8月の平均海水温は過去最高を記録。専門家は「これまで取れなかった魚が水揚げされる傾向は、今後も続く可能性がある」と予測している。(坂野貴)

売り方に苦慮

 県水産研究所(滑川市)によると、特に減少が目立つのは低水温を好むスケトウダラだ。1995年の漁獲量は355トンだったが、2017年以降、ほぼ取れていない。反対に高水温を好む南方系のシイラやサワラは増加傾向を見せている。特にシイラの漁獲量は21年に過去最高の1401トンにまで達している。

 かまぼこなどの練り物になるスケトウダラだが、富山では梅雨時に取れ、“旬”を感じる鮮魚として流通していた。大阪屋ショップ(富山市)で鮮魚担当を30年近く務める押田吉弘さんは「今では近海ものではなく、太平洋側から仕入れるようになった。サワラは流通が急に増え、まだ売り方に悩んでいる。富山ではなじみが薄いので、なかなか売れない」と話す。

ブリ北上傾向

 同研究所では、湾内の17定点で水深0~300メートルの水温を測定している。富山湾の冬の味覚を代表するブリなどが生息する水深30メートルで8月の平均海水温を調べると、平年より2・58度高かった。

 海水温は、気温や日照時間など様々な要因が重なって変化する。8月の水温に影響を与えるのは6月の平均気温や日照時間で、富山ではともに平年を大きく上回り、海水が熱を保ちやすい条件がそろった。

 夏の海水温が上昇しても、ブリなど冬にとれる魚の漁獲量には直接影響はしない。だが、同研究所によると、富山湾の水温が最も低くなる4月の平均水温でも近年は上昇傾向になり、この数十年で見ると1度弱上がっているという。

 ブリの水揚げ量は2010年頃から、北海道で急増しており、分布域は北上傾向にある。同研究所の阿部隼也研究員は「水温上昇が今後、富山湾でのブリの水揚げに影響を与える可能性はある」とみる。魚津水族館の稲村修館長は「温暖化や海流の変化は、湾に入ってくるブリの量だけでなく、身質も変わってくる恐れがある」と話した。