9月に入ってウクライナ情勢に大きな変化が出ている。10日夜にはゼレンスキー大統領がビデオ演説で、今月に入って反撃を開始して以降、約2000平方キロメートルの領土を奪還したと主張した。またウクライナ軍の司令官は12日、これまでに奪還した領土は「3000平方キロメートル余り」とSNSを通して公表している。数字はいずれも推計値と見られるが、いずれにしても今月に入ってウクライナ軍の進撃が猛烈な勢いで続いていることを印象付けた。これに対して東部の親ロシア派勢力の元司令官は「大きな敗北だ」(ロイター)とメッセージアプリ「テレグラム」に投稿している。ウクライナ情勢の戦況は当局の慎重な発表方針や、偽情報が氾濫する情報戦争も手伝って正確な事態は把握しづらい。加えて、一般のメディアの情報発信が2日〜3日遅れている。それを割り引いても先週来、ウクライナ軍には勢いがあるようにみえる。

半面、ロシア軍の敗色は濃厚だ。ハリコフ州の要衝イジュームの北側に位置するクピャンスク。ここはハリコフとイジュームを結ぶ交通の要衝であり、かつロシアに通じる戦略的な都市だ。その奪還にウクライナ軍が成功した。これによってロシア軍はイジュームへの戦略物資の輸送が断たれるうえ、手薄になっている兵士の増強もままならなくなっているようだ。ゼレンスキー大統領は11日、ウクライナ軍がイジュームに到達したと宣言した。これがイジュームの奪還を意味するとすれば、ロシア軍はこの先、戦争の主導権を失いかねないほどの大きな痛手を被ったことになる。ウクライナ軍は8月後半から9月にかけてロシア軍の弾薬庫などを集中的に爆撃している。ロシア軍は弾薬を失った上に、戦略物資の補給路まで断たれたとすれば、撤退せざるを得ないところまで追い込まれた可能性がる。SNSには撤退ではなく敗走が始まっているとか、兵士が脱走しているとの情報もある。

ロシア国内にも不穏な空気が流れているようだ。CNNはプーチンの生まれ故郷であるサンクトペテルブルクにある自治体の当局者が、「プーチン大統領の弾劾(だんがい)訴追を呼び掛け、警察に呼び出された」(ロイター)と伝えている。また、モスクワ市・ロモノソフスキー地区の議会は9日、「(プーチン氏の)言動がロシアを冷戦時代に引き戻し、世界を核兵器で脅すことにつながっている」(時事ドットコム)と批判、経済成長は実現せず、有能な人材が海外へ流出していると指摘、辞任を要求したとの情報もある。SNSにはロシア市内の主要幹線道路が昨夜通行止めになったとの情報まで流れている。いずれも真偽のほどは定かではない。ウクライナ軍の攻勢が早すぎるためか、情報の確認が追いついていないようだ。ウクライナ情勢は、2月24日の「特別軍事作戦」開始以来、最大級の転換点を迎えているように見える。正確な情報を待つしかない。