インフレはピークアウトする、マーケットが描いた楽観的な予想はものの見事に裏切られた。きのう(13日)、米労働省が発表した8月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年同月比8.3%上昇、伸率は6月の9.1%(史上最高)、7月の8.5%から縮小したものの、市場予想である8.1%を上回った。上回ったと言っても0.2%に過ぎない。だが、このわずかな違いが市場に与えたショックはあまりにも大きかった。NY株式市場の株価は前日比1276ドル暴落した。原油価格は低下したものの家賃や食品、ヘルスケア関連の価格が上昇した。とりわけ家賃の上昇が大きい。家賃は一度上昇するとそのままの水準が長期にわたって維持される傾向が強い。要するにインフレは長期化するということだ。20日、21日にFOMCが控えている。これで0.75%の利上げはほぼ確実になった。ひょっとすると1%もあるかもしれない。
インフレの元凶と見られてきたガソリン価格は前月比10.6%下落した。FRBによる相次ぐ利上げで景気後退感が強まり、ガソリン需要が景気に先駆けてピークアウトしつつあることが原因。ガソリン急騰が玉突きのように供給サイドに広がったことがインフレを押し上げた一つの要因。そのガソリンは市場の読み通り低下傾向を強めた。インフレを押し上げてきた一つの要因にブレーキがかかれば、誰でも物価は次第に落ち着くはずだと思う。ところが8月の指数を見ると食品が前月比0.8%上昇、前年同月比でも11.4%上昇、1979年5月以来の大幅な伸びとなった。加えて、家賃が前月比0.7%上昇、前年同月比では6.3%上昇と大幅に上昇した。これは86年4月以来最大の上昇率だという。コロナによる供給制約が緩和されつつある中での逆行高。市場関係者が受けたショックの大きさはむべなるかなだ。
インフレはいつまで続くのか。ウクライナ戦争の終息が見通せないだけに予測するのは難しい。8月の米CPIの中身を見るとガソリン価格が低下したほか、中古車や航空運賃、通信費は下落。ホテルなどの宿泊料は横ばいだった。これ以外は光熱費や家具、教育費、新車、ヘルスケア製品、薬など生活関連製品が軒並み値上がりしている。ロイターはロヨラ・メリーマウント大学のSung Won Sohb金融・経済学教授の見解を引用している。それによると「賃金と住居費が引き続き今後のインフレの主要因となるだろう」と分析、「短期的にインフレが大幅に緩和する様子は見られない」と説明している。帝国データバンクによると、日本でも10月には6000を超える品目の値上げが予定されている。岸田政権は10月にも総合的な経済対策をまとめることにしている。猛烈な勢いで迫り来るインフレの脅威、金融政策を含めて後手を引くことは許されない。
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