安倍晋三・元首相の国葬(国葬儀)が9月27日に行われる。「国葬」とは何か、いつどこで行われるのか、歴代首相の葬儀とはどこが違うのか、などポイントをまとめた。
国葬は、いつ以来?
国葬は、1967年10月31日に行われた吉田茂・元首相以来、55年ぶり。安倍氏が戦後2例目となる。
いつ、どこで、どのように行われる?
国葬は、27日午後2時から、東京・日本武道館で行われ、皇族や国会議員、海外の要人ら約4300人の参列が見込まれている。吉田氏の国葬の時と同様に、安倍氏の国葬も無宗教形式で行われる。名称は「故安倍晋三国葬儀」。日本武道館とは別の場所に一般の献花台も設けることを調整している。
想定される国葬当日の流れは、会場に安倍氏の遺骨が到着した後、松野官房長官が開式の辞を述べる。国歌演奏と黙とうが行われた後、追悼の辞、天皇、皇后両陛下と上皇ご夫妻の使者による拝礼、皇族各殿下によるご供花の順に執り行われる。
追悼の辞は、首相と衆参両院議長、最高裁長官の「三権の長」と、友人代表として菅前首相が述べる。
歴代首相の葬儀は?
沖縄返還を実現し、1975年に死去した佐藤栄作氏は、政府と自民党、国民の有志が費用を分担する「国民葬」だった。80年に死去した大平正芳氏以降は、内閣と自民党が共催する「内閣・自民党合同葬」が主流になっている。87年に死去した安倍元首相の祖父・岸信介氏や2020年の中曽根康弘氏も内閣・自民党合同葬だった。
1988年に死去した三木武夫氏の場合は、衆院と内閣の合同葬で葬儀委員長を衆院議長が務めた。ロッキード事件の刑事被告人だった田中角栄氏は、自民党と田中家の「合同葬」が93年に行われた。
国葬と国民葬、合同葬との違いは?
国葬とは、国家が主催する葬儀のため、費用は全額国費から支出される。国民葬や合同葬の費用は折半となり、費用負担や主催者の違いで名称が異なる。
実施する法的な根拠は?
戦前は、1926年に公布された「国葬令」に基づき、皇族の葬儀のほか、国家に偉勲のあった人が亡くなった際、天皇の特旨(特別な意向)により国葬を行った。伊藤博文や山県有朋といった首相経験者、日露戦争の日本海海戦で連合艦隊司令長官として指揮を執った東郷平八郎らの葬儀が国葬として行われた。
国葬令は、47年の日本国憲法施行により失効している。吉田茂氏の場合は、吉田氏を政治の師と仰ぐ当時の佐藤栄作首相の指示で、政府は国葬の実施を閣議決定し、死去から11日後に国葬が行われた。
安倍氏の場合、政府は国葬を含む「国の儀式」を内閣が司る(所掌事務)と定める「内閣府設置法」と、国葬の実施を決めた7月22日の閣議決定を根拠とし、「法的に問題はない」との立場だ。
休日に?
1967年の吉田氏の国葬に関しては、政府が各省庁に弔旗掲揚や黙とうを求める閣議了解を行い、自治体や学校、会社、一般に対しても「哀悼の意を表するよう協力を要望」した。
安倍氏の場合は、国民に弔意の表明を強制するとの誤解を招かないよう、同様の閣議了解を見送った。国葬の日は火曜だが、政府は学校や官公庁を休みにしない方針。