北朝鮮がきのう、中距離弾道ミサイル1発を発射した。これを受けて日米韓の政府当局者は連絡、調整、対抗策の検討に追われた。メディアも朝からこの情報を巡って報道合戦を繰り広げた。ミサイルは東北の上空を飛行して太平洋側にある日本の排他的経済水域外に落下。被害はほとんどなかったが、メディアの報道は過熱した。本物のミサイルが飛んできたらどうなるのだろう。メディアへの杞憂など問題ではなかった。Jアラートの不具合が発覚したのだ。ミサイルの危険性がない東京都の島しょ部でもJアラートが鳴り響いた。上空を通過した青森県では、ミサイル通過後にアラートが鳴ったという。危険を知らせるアラートが、危険がなくなってから鳴る。なんとも間抜けな話だ。Jアラートの不具合は、惰眠を貪る日本への警告だろう。

有事の際の住民避難にとって大切なことは、正確な情報の速やかな提供だ。その役割を担っているのは消防庁が運用するJアラートだ。正式な名称は「全国瞬時警報システム」。有事はミサイルだけではない。台風や地震、河川の氾濫など大規模な自然災害時にもJアラートは鳴る。仕組みはそんなに複雑ではない。戦争やミサイルなど武力攻撃は内閣官房から、自然災害は気象庁から、関連情報が消防庁の送信システムに送られる。同システムはこれを市町村に設置されたJアラート受信システムに送る。ここから先は自動的に防災無線や住民のメール宛に情報が送信される。大半の自治体は受信装置で受けた情報をスピーカーで住民に知らせている。このシステムのどこに不具合があったのか、「関係省庁で原因を速やかに調査する」。毎度お馴染み松野官房長官の説明だ。

いつものことながら事後対応。システムの不具合だから「致し方ない」と、穏便に収めようとする自分がいる。だが、「本当にミサイルが飛んできたらどうなる」、厳しく反応すべきだという過激な声も頭をよぎる。消防庁のホームページには「北朝鮮弾道ミサイル発射事案への対応」というマニュアルが掲載されている。そこには「弾道ミサイル落下時の行動について」というパンフレットがある。Jアラートでメッセージが流れたら、①屋外にいる場合は「近くの建物の中か地下に避難」②建物がない場合は「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」③屋内にいる場合は「窓から離れるか、窓のない部屋に移動する」とある。国民の命を守るために政府が真剣に対応しているのはわかる。だが、システムに不具合があればそんな努力も水疱に帰す。Jアラートに限らない。政府のやること、何かが抜けている気がするのだ。