きのうの国会での質疑応答。国民民主党の玉木代表が次の質問をした。概要は次のようなものだ。「9月22日に行った円安防止のための為替介入で外為特会を経由して外貨準備の資金の一部が使われた。日本の外貨準備は現在約180兆円ある。円安でかなりの含み益が出ているはずだ。機械的に計算するだけでその額は37兆円に達する。総理、この資金を緊急経済対策の財源に使ってはどうですか」。これに対する岸田首相の答弁、もちろん財務省の官僚が書いた作文だ。「外為特会が保有する外貨資産は、外為相場の安定を目的として将来の為替介入などに備えて保有しているもので、財源確保のために外貨を円貨に替えるのは実質的にドル売り・円買いの為替介入そのものとなる」、「(G7などの国際的な合意で)為替介入は過度な変動や無秩序な動きへの対応のために行われるとされており、この面から適当ではない」(ロイター)。

この答弁を補足なしで理解できる人が果たして何人いるのだろうか。自信はないが個人的には「円相場を安定させる目的以外には使えない」、財務省はそう考えていると理解している。財務省が目指す円相場の安定とは、現時点で考えれば過度な円安を避けることだ。それなら介入よりも黒田日銀総裁が固執する異次元緩和を止めた方が効果的だと思うのだが、それに対する回答はない。マーケットを揺さぶっている投機的な動きが急激な円安の原因と断定。これを阻止するために市場介入に打って出るというロジックだ。介入の原資は外為特会から出る。円換算で2.8兆円に達したと同省は発表している。外貨準備全体の含み益は現在30兆円〜40兆円に達していると見られている。この含み益をインフレ対策として編成中の緊急経済対策の財源にしてはどうか、これが玉木氏の質問の趣旨だ。

岸田首相にその気は全くない。官僚の書いた作文を読むだけだ。安倍元首相の国葬儀や統一教会問題で超繁忙な総理である。インフレに苦しむ庶民の実情などに思いが及ばないのかもしれない。ましてや外貨準備や含み益など経済の仕組みの細部まで頭に入っていないのだろう。外貨準備として積み上げた外為特会の資金を経済対策の原資に利用するという玉木氏のアイデアに興味も示さない。外貨準備を経済対策の原資として活用するためには、何らかの制度上の制約があるのかもしれない。だがそんなことを言い出したら新しい資本主義も人への投資も現実味がなくなってします。仮に制約があるなら変えればいいだけだ。使ってはいけないという法律があるわけではない。要は何を言っているのかよくわからない官僚の書いた文書以外は信用しない政府の基本姿勢に問題があるのではないか。ちなみに9月末現在の外貨準備は1.23兆ドル、円に換算すれば約180兆円だ。政府の年間予算の1.5倍強もある。