温暖な天候とLNG調達成功で貯蔵施設はほぼ満タン、価格も下落

気温が依然リスクも、「ガスだぶつきは少なくとも12月まで続く」

Absorber columns at the Gazprom PJSC Slavyanskaya compressor station, the starting point of the Nord Stream 2 gas pipeline, in Ust-Luga, Russia, on Thursday, Jan. 28, 2021.  Photographer: Andrey Rudakov/Bloomberg

欧州のエネルギー危機が予想外に好転し、ガスがだぶついている。

  長らく頼っていたロシアからの輸入が減少し、欧州は貯蔵率を引き上げるため世界各地から液化天然ガス(LNG)の輸入を急いだ。例年にない温暖な天候とLNGの調達成功で、暖房需要が生じる前の現時点で欧州のガス貯蔵施設はほぼ満タン状態だ。ガス価格もこのところ急落し、夏季に付けたピーク価格の3分の1を下回る。

  ただ、今後にリスクは残る。気温に左右される度合いが大きく、寒波が欧州を襲えばガス貯蔵率は急速に低下する。エネルギー施設にさらなる破壊工作が行われる恐れにも各国政府は神経をとがらせている。それでも10月末現在、政策当局者が想定していたよりも欧州は十分にガスを確保できている。

  ロシアのガス供給は昨年から減少が始まり、ロシア産ガスを欧州に輸送する主要ガスパイプライン「ノルドストリーム」は9月に数回の爆発で損傷する以前から稼働を停止していた。暖かい天候が現時点での需要を抑えている。だが欧州の当局者は、夏に比べて価格が下落したことで気温が低下した際にガスの使用が増えるのではないかと懸念する。

  イタリアのエネルギー会社イルミアの上級気象学者、ジャコモ・マサト氏は「欧州でのガスだぶつきは少なくとも12月まで続くと見込まれる」と予想。「11月に欧州で寒波が長く続く可能性は低い」と述べた。

  欧州のガス価格は6月以来の低水準付近にあるが、価格は依然リスクを織り込んでいる。ガス先物2月限は期近物に比べ44%上乗せされた価格で取引され、次の冬に備えるガス先物価格も高いなど、供給問題は持続すると見込まれている。

原題:Too Much Gas. Europe’s Energy Crisis Takes a Surprise Turn (1)(抜粋)