[東京 26日 ロイター] – トヨタ自動車が、2030年までに電気自動車(EV)30車種をそろえる戦略の第1弾として発売したスポーツ多目的車(SUV)「bZ4X」について、2025年以降の増産を検討していることが分かった。トヨタはEV戦略の見直しに入っており、後続車両の開発・投入が遅れる可能性があることから、既に発売したbZ4Xの販売を増やしてできるだけ補いたい考え。

事情に詳しい関係者3人が明らかにした。bZ4XはSUBARUとの共同開発車で、同社が販売する車名「ソルテラ」の車両も合わせて、元町工場(愛知県豊田市)が生産を手掛けている。関係者2人によると、元町工場での同車の生産能力は現在、月1000台規模。今後は高岡工場で月8000台程度、部材調達次第ではその倍に増やすことも視野に検討している。

増産規模は部材調達や販売の状況にもよるため、さまざまな要件を勘案して今後、正式に決める。増産の開始時期は電池や半導体などを確保するのに時間もかかることから、25年以降になる見通し。bZ4Xは現在、中国市場向けは現地で生産しており、元町工場では日本、欧州、北米、アジア向けを生産している。

トヨタはロイターの取材に対し、生産計画についてはコメントできないとした。

トヨタは昨年12月、EV用に開発したプラットフォーム(車台)「e-TNGA」を土台にしたEVを30年までに30車種投入すると発表。EVへの移行にはしばらく時間がかかると予測し、ガソリン車やハイブリッド車と同じラインで生産できるよう設計していた。

しかし、別の関係者4人によれば、EV市場が予想以上の速度で拡大し、専業の米テスラが革新的な生産技術を導入するなどして黒字化をすでに達成していることから、よりコスト競争力のある車両を開発するために戦略修正の検討に入っている。

基本設計から変更する可能性があり、一部車種は開発を中断している。停止した車両の開発計画には小型SUV「コンパクトクルーザー」などが含まれている。トヨタが24日に中国で発表した小型EVセダン「bZ3」は現地で生産した中国市場専用車で、現時点では中国以外の展開は計画していない。

関係者の1人は「戦略を見直している間はEVの弾込めができなくなってしまう。bZ4Xでつなぎたいと考えている」と話す。

今年6月に発売したbZ4Xは、急旋回などでタイヤが外れる恐れがあるとして発売から約1か月後に生産・販売を一時停止していたが、今月26日から国内販売を再開した。国内販売は定額課金サービスのみだが、再開にあたり、利用者を拡大するため申込金を従来の半額とするなど大幅な値下げにも踏み切った。

初年度5000台としていた国内販売計画は、半導体不足などによる生産調整も重なり「見直しが必要」(前田昌彦副社長)と下方修正を示唆していたが、今後は値下げ効果も少しずつ見込まれる。世界的な半導体不足も徐々に解消されると想定し、EVの普及が加速している欧州など海外への輸出台数も積み上がるとみて生産能力増強の準備を進める方針だ。

(白木真紀 編集:久保信博)