梅川崇、Chikako Mogi

  • 収益額は1兆7220億円赤字、国内外の債券と株式の全資産がマイナス
  • 金融引き締めによる景気後退に警戒感、株式市場は下落-宮園理事長

世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2022年度第2四半期(7-9月)の運用収益率はマイナス0.88%となった。赤字額は1兆7220億円と、3四半期連続の赤字となった。GPIFが4日公表した。3四半期連続の赤字運用は、リーマンショックで世界的に金融不安が高まった08年度第2四半期から第4四半期以来となる。

  資産別の収益率は、国内債券がマイナス0.79%、国内株式がマイナス0.84%、外国債券がマイナス1.54%、外国株式がマイナス0.49%だった。

  9月末時点の運用資産額は192兆968億円と、6月末の193兆126億円を下回った。市場運用を開始した01年度からの累積の収益率(年率)はプラス3.47%、収益額は99兆9567億円。

  GPIFの宮園雅敬理事長は、同日公表した声明で「世界的にインフレが進行する中、米国に続きユーロ圏でも中央銀行が利上げに着手したことなどから、欧米を中心に金利が上昇し、為替は対ドルで円安が進行した。また、こうした金融の引き締めによる景気後退への警戒感等から、内外の株式市場は下落した」と総括した。

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  7-9月は国内外の株価が下落した。先進国と新興国の株式で構成されるMSCIオールカントリーワールド指数が7.3%安、米国のS&P500種株価指数が5.3%安となった。東証株価指数(TOPIX)は1.9%安だった。

  GPIFは、長期の実質的な運用利回り目標として賃金上昇率を1.7%上回る水準に設定し、20年度からは資産配分を国内外の債券と株式に25%ずつ、等分に振り向ける基本ポートフォリオに基づいて運用している。

  9月末の資産構成割合は、国内債券が27.26%、国内株式が23.84%、外国債券が25.04%、外国株式が23.86%で、インフラや不動産などのオルタナティブ(代替)資産は1.47%だった。

  一方、外国為替市場では円がドルに対して6.7%安となり、ドル建て資産の円換算額を押し上げた。対ユーロでは、円は0.3%高となった。

  JPモルガン証券の山脇貴史債券調査部長は、今回の運用状況について「完全に株安・債券安によるものだ。中央銀行の利上げ継続による警戒感が株と債券に広がったが、円安で小幅なマイナスにとどめられた」と話した。

資産構成割合22年9月末6月末3月末21年12月末9月末
国内債券27.26%25.65%26.33%24.95%26.79%
国内株式23.84%24.53%24.49%24.92%25.03%
外国債券25.04%25.70%24.07%24.46%24.17%
外国株式23.86%24.12%25.11%25.68%24.01%
オルタナティブ1.47%1.32%1.07%0.92%0.82%
7-9月収益額収益率
運用資産全体-1兆7220億円-0.88%
国内債券-3982億円-0.79%
国内株式-3679億円-0.84%
外国債券-7644億円-1.54%
外国株式-1916億円-0.49%