先週から東南アジアを舞台に一連の国際会議の幕が切って落とされた。各国首脳による政治ショーのはじまりだ。ここでさまざまな課題が話し合われ、何かが決まり、何かは決まらない。深刻な問題は先送りされ、各国首脳は自国向けに手前勝手な“成果”を声高に誇張する。それでもこうした会議にウクライナ戦争やカーボンニュートラルなど人類の未来がかかっている。メディアには一連の会議の全容を包み隠さず伝えてほしい。と願いつつ、公表され報道される“事実”にはいつもバイアスがかかっている。大事なことは水面下で密かに決まり、地球の住人に「不都合な真実」が伝えられることはほとんどない。南北対立、東西対立など、さまざまな障壁が事実の前に立ちはだかる。偽旗作戦とかフェイクとまでは言わないが、大半の発表がプロパガンダの色合いを帯びている。メディアの伝える力も今ひとつ信頼性に欠けている。

それでも国際会議に関する報道に目がいってしまう。バイデン大統領はエジプト経由でカンボジアに入り、インドネシアに向かう。エジプトではCOP27が開かれているシャルムエルシェイクに立ち寄り、発展途上国支援を約束した。開催国エジプトは異常気象など自然災害にともなう「損失と被害」に関する支援問題を、今会議の正式テーマに取り上げた。これが会議の最大焦点だが、依然として南北対立を打開するメドは立っていない。13日には日米韓の首脳会議が開かれた。北朝鮮に対する連携強化で一致したが、抜本的な対策が議論された節はない。この間、各国首脳による個別の会談がセットされるだろうが、そうした会談で議論された内容のほとんどは報道されない。プーチンは一連の会議を欠席した。ヘルソン撤退が彼の国際的な存在感を希薄にしたのだろう。プーチンの不在がむしろ雄弁にウクライナ戦争の行方を暗示している。

ASEANと日米ロなど域外の首脳が参加する東アジアサミットでは、不在のプーチン並びにロシアに対する非難が各国首脳の口をついて飛び出した。これもメディアがそう伝えているから、「そう見える」だけなのかもしれない。裏で代理出席したラブロフ外相と各国首脳がどんな話をしたか、ほとんどのメディアは伝えていない。国際会議と言っても、実態は世界中の指導者が集まるインナーサークルに過ぎない。言ってみれば指導者はインサイダー、これをみまもる市民はアウトサイダーである。インサイダーはインサイダー内の暗黙のルールに縛られる。それは言ってみれば「よらしむべし知らしむべからず」かもしれない。国際会議も一種のプロパガンダにすぎない。それを報道するメディアにもバイアスがかかっている。国際会議、それを報道するメディア、ニュースの構造には注意が必要だ。