中国の習近平国家主席=2022年12月、リヤド(サウジアラビア王室提供)(EPA時事)
中国の習近平国家主席=2022年12月、リヤド(サウジアラビア王室提供)(EPA時事)

 【北京時事】中国は5日に見込まれていたブリンケン米国務長官の訪中により、対米関係安定化への糸口を見つけたい考えだった。米本土上空に飛来した気球を巡って中国側は早期の幕引きを図ったが、もくろみは外れ、ブリンケン氏の訪中延期によって米中の歩み寄りの機運は大幅に後退することになりそうだ。

米国務長官、訪中を延期 「偵察気球」影響か―報道

 中国外務省は4日の報道官談話で「米国の一部の政治家やメディアが(気球の)問題を利用して中国を攻撃していることは、断固反対だ」と表明。ただ、米側の決定を「尊重する」とも指摘し、気球が「民生の気象研究用」であったことを改めて強調した。

 中国外務省が、気球が中国発のものだと公式サイトで認めたのは3日夜。「米国内に誤って入ったことは遺憾」とする短い文章を掲載した。同省は同日午後の定例会見では、状況を「確認中」として、「臆測や大げさな騒ぎ」を控えるよう内外メディアにくぎを刺していたが、わずか数時間で説明を一転させ、自国の非を認める事態となった。こうした中国の異例の対応の背景には、ブリンケン氏の訪中前に米中間に波風を立てたくないという思惑があったとみられるが、外務省発表の直後には訪中延期が報じられ、中国側は面目を失った格好だ。

 中国共産党機関紙系の環球時報(電子版)は当初、専門家の見解として、気球が中国から軍事偵察目的で飛来したという米国の指摘を一蹴。米側の「自作自演の可能性もある」などと非難したが、記事は間もなく削除された。4日付の紙面では「米国は気球問題を利用し、中国に圧力をかけている」としつつ、「中国は常に米国との誠実な意思疎通を希望している」「多くの米国人は中国との衝突を望んでいない」と強調。米側に一定の配慮を見せた。

 中国は、新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を3年近く続けた影響で国内景気が低迷。経済の活性化や諸外国との人的交流の正常化を急いでいる。台湾問題など多くの火種を抱えつつも、短期的には米国との対立激化を避けたい思惑がある。ブリンケン氏は訪中で、習近平国家主席との会談も取りざたされていた。訪問延期を受け中国は今後、米国との対話の仕切り直しに動くとみられる。