[27日 ロイター] – 米地銀ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズは27日、経営破綻したシリコンバレー銀行(SVB)を買収すると発表した。SVBの預金、融資債権、一部資産を引き受けることで管財人である米連邦預金保険公社(FDIC)と合意した。 

今月10日のSVB破綻を受けて金融システム不安が高まり、同行の売却入札も不調が続いたが、ようやく買い手が決まったことを受けて市場心理が好転、地銀をはじめ銀行株が大幅高となった。

傘下のファースト・シチズンズ・バンク&トラストがSVBの資産1100億ドル、預金560億ドル、融資債権720億ドルを引き継ぐ。SVBが保有していた証券約900億ドルは、処分のため引き続きFDICの管理下に置かれる。

TDカウエンのアナリスト陣は「SVBの売却先が地銀に決まったことは銀行にとって政治的に有益だとわれわれはみている。地銀大手の問題がメガバンクの助けがなくても解決可能だと主張できるようになるからだ」と述べた。

ファースト・シチズンズは買収に伴い臨時の流動性目的でFDICの融資枠を確保する。また信用損が発生した場合の追加策としてFDICと損失を分担する合意を結ぶ方針とした。

SVBの17の旧支店は、ファースト・シチズンズ・バンク傘下のシリコンバレー銀行として27日から営業開始する。

FDICは、合意の一環として最大5億ドルのファースト・シチズンズ・バンク・シェアーズ株の値上がり益を得る権利を取得したと明らかにした。FDICは3月27日─4月14日にこの権利を行使することが可能だが、どれだけの現金を受け取れるかはファースト・シチズンズの株価によって決定される。

ファースト・シチズンズ株はこの日、53.7%高で終了した。

ホワイトハウスは米国の銀行システムは安全との見解を改めて表明した。

FDICはSVB破綻に伴う預金保険基金のコストが約200億ドルと試算。同基金は銀行部門から徴収した保険料で資金を賄っているため、税金は使われない。

ファースト・シチズンズの資産規模は約1090億ドル、預金総額は894億ドル。今回の合意は、自行の強固な財務内容を保持できるよう設計されたとし、統合後も多様な債権ポートフォリオと預金基盤を有する強靭な状態を維持すると説明した。

SVB買収のニュースで他の地銀株にも買いが入り、経営不安が強まっていた中堅銀行ファースト・リパブリック・バンクは約12%上昇した。

AJベルの金融分析担当トップ、ダニー・ヒューソン氏は、週明けに新たに救済を必要とする銀行が表面化するとの懸念があったが「確実性がもたらされて緊張が和らいだ」と指摘した。

欧州市場でも先週末に急落したドイツ銀行株が6.2%上昇した。

連邦準備理事会(FRB)のバー副議長(金融監督担当)とグルーエンバーグFDIC総裁は28日の上院公聴会で発言が予定されている。バー氏は議会証言の準備原稿で、米規制当局は国内の全ての銀行預金の安全確保に尽力しており、システム保護に向け必要ならばあらゆる規模の金融機関に対して措置を講じる用意があると述べた。

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