Jamie McGeever
[オーランド(米フロリダ州) 19日 ロイター] – 米金融市場は、米政府債務上限引き上げを巡る議会対立が夏頃に正念場を迎え、その悪影響に鑑みて米連邦準備理事会(FRB)が最後の利上げから数カ月以内に利下げに転じると想定してきた。足元では、そうした織り込みが行き過ぎたかもしれないとの見方から、巻き戻しを試みている。
FRBは政策担当者による「ドットチャート」や発言を通じ、政策金利は年末まで高止まりする確率が高いと示唆してきが、金利先物市場は今でも利下げを織り込み続けている。
市場の見方がFRBと異なるのは、債務上限引き上げを巡って議会審議が行き詰まり、経済と市場に悪影響を及ぼしてFRBが利下げに追い込まれる、との観測が一因だ。
議会が合意に達しなければ、6月から10月ごろのある時点で財務省の資金は底を突く見通し。ちょうどそのころか少し前に政策金利は利上げサイクルのピークに達すると予想されている。
債務上限引き上げ間際に議会が対立するのは、すっかりお馴染みの光景だ。財務省によると、議会が上限の恒久的な引き上げや一時的延長、上限の定義修正を行ったのは、1960年以来で78回に及ぶ。
今回異例なのは、そうした不透明な状況がちょうど、FRBが利上げを行っている最中に訪れそうなことだ。債務上限引き上げ騒ぎが本格的に市場を震え上がらせたのは、直近では2011年と13年だが、現在の状況は当時ともかけ離れている。
TDセキュリティーズの米金利ストラテジスト、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「当時はFRBの金利パスは問題になっていなかった。今回は数多くの要因が頂点に達し、市場は非常に神経質になっている。逃げも隠れもできない状態だ」と語る。
2011年半ばと13年10月に債務上限が迫った際、政策金利は過去最低の0─0.25%だった。この低金利は結局、2008年末から15年末まで7年も続くことになる。
FRBは低金利を維持するとの明確なメッセージを打ち出していた。
現在の状況は大きく異なる。
<Xデー要因>
過去との比較は困難だ。米財務省短期証券(Tビル)利回りと、政策金利見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)金利のスプレッドを、過去の事例と比べる方法はあり得るかもしれない。
3カ月物Tビルは現在、3カ月物OIS金利を約15ベーシスポイント(bp)上回っている。先週は30bpまで拡大する場面があった。
これは珍しい。他の条件が同じなら、Tビル利回りはOISを下回るはずだ。米国の信用格付けが初めて引き下げられた2011年でさえ、Tビル利回りはOISより低かった。13年には市場のゆがみによって逆転したが、それもスプレッドは数bpにとどまった。
つまり投資家は現在、政府の資金が尽きる「Xデー」と重なる懸念だけでなく、金融政策見通しの不透明感ゆえに、3カ月後に満期を迎えるTビルを持ちたがらないように見受けられる。
FRBは5月に追加利上げを実施すると予想されており、インフレと成長率のデータ次第では6月に再び利上げする可能性も残っている。
この政策金利見通しも、数カ月後に満期を迎えるTビル利回りが上昇した要因の1つだ。ただ7─9月期の後半に満期を迎えるものになると利回りは急低下している。
パイパー・サンドラーのグローバルポリシー責任者、ベンソン・ダーラム氏は「債務上限リスクの一部を金融政策見通しに反映させている人々がいるのかもしれない。向こう数カ月間、債務上限と金融政策はますます絡み合って行くだろう」と話した。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)