[東京 20日 ロイター] – 岸田文雄首相は20日、安定した米中関係が国際社会にとって重要だとした上で、中国が「大国としての責任」を果たすよう働きかけていく考えを示した。ロシアによるウクライナ侵攻と台湾海峡を含む東アジア情勢を重ね合わせ、「力による一方的な現状変更」は地域を問わず許されないとした。

岸田首相はロイターなど外国メディアの取材に応じ、「同盟国の米国とは信頼関係に基づきさまざまな課題で協力していきたいが、中国に対しても国際社会において大国としての責任をしっかり果たしてもらうべく働きかけを行う」と語った。

米中が台湾問題や経済安全保障、人権などを巡って対立を深める中、中国の隣国で経済的な結びつきも強い日本は難しい立ち位置にある。岸田首相は昨年11月、習近平国家主席と約3年ぶりに対面で会談。東シナ海情勢などについて懸念を表明する一方で、あらゆるレベルで意思疎通を図っていくことで習氏と一致した。

岸田首相は外国メディアに対し、「建設的かつ安定的な関係を構築することを双方の努力で進めていく、これが日本の、そして私の基本的な考え方だ」と語った。

緊張が高まる台湾情勢については、「海峡の平和と安定はわが国のみならず、世界の国際社会の安定にも関わる重要な問題」と指摘。ロシアによるウクライナ侵攻に触れ、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれないと言い続けてきた」と語った。

その上で岸田首相は「力によって現状を変更するのは欧州であれアジアであれ、どの地域であれ許されない」と述べ、5月に広島市で主催する主要7カ国(G7)首脳会合で改めてその原則を確認する考えを明らかにした。

台湾情勢を巡る日本の軍事的な関与を問われると、「憲法、国際法、平和安全法制をはじめとする国内法に従って対応する」と述べた。

アステラス製薬 4503.Tの社員など日本人が中国で拘束された事案にも触れ、早期帰国の実現を同国に働きかける一方で、司法手続きの透明性を図るよう求めていることを明らかにした。岸田首相は「日本企業の正当なビジネス活動が保障されることを求めている」と語った。

このほか岸田首相は、重点施策に掲げる少子化対策の財源について、「当面消費税にさわることは考えていない」とし、消費税率の引き上げはしばらく検討しない考えを示した。

岸田政権は先月末に少子化対策のたたき台をまとめ、児童手当の所得制限撤廃などを盛り込んだ。2030年代に入ると若年人口が現在の倍のペースで急減する見通しのため、今後3年で優先的に取り組む対策を「こども・子育て支援加速化プラン」とし、予算措置や法改正などを進める。

G7の中で日本だけ法制化していない同性婚については、「国民生活の基本に関わる問題、国民ひとりひとりの家族観にも関わる問題」と指摘。「各国の事情はさまざま、具体的な制度はそれぞれの国の事情を勘案しながら丁寧に議論を進める姿勢も大事と考えている」とした。

また、和歌山県で選挙応援中に爆発物が投げ込まれた事件について、言論を暴力で封じ込めようとすることはあってはならないと強調。「民主主義の基本である選挙は暴力に屈してはならない、そういう思いで選挙運動を継続した」と語った。要人が来日するG7広島サミットに向けて警備のあり方を再点検する考えを示した。

(豊田祐基子、竹本能文、杉山健太郎、村上さくら 編集:久保信博、橋本浩)