エルドアン氏の再選なるか、注目されたトルコ大統領選。まだ最終結果が出ていないが有力候補の2人がいずれも得票率で50%を超えず、28日の決選投票に持ち込まれる可能性が高くなった。事前の世論調査では野党統一候補のクルチダルオール氏が有力とみられていた。決選投票に持ち込まれたこと自体は、20年近く大統領職に留まってきたエルドアン氏が最終局面で巻き返した結果だろう。決選投票はどちらが勝ってもおかしくない。とはいえ、仮にエルドアン氏が敗北すれば、トルコの内政に限らずウクライナ戦争を含めた国際政治にも大きな影響が出るだろう。トルコ国内はもとより国際政治の舞台裏ではこの間、様々な駆け引きが展開されそうだ。折からウクライナはロシア軍に対して大攻勢を仕掛けようとしている。決選投票までの2週間、トルコ大統領選挙の行方を世界中が固唾を飲んで見守ることになる。

トルコ情勢に詳しいわけではないし、専門家でもない。毎日、国際政治に関連するニュースに目を通しているだけだが、エルドアン氏は持ち前の行動力と独特の政治感覚を武器に、主要な場面に頻繁に登場する国際政治家である。ウクライナ戦争が始まって以来同氏は、プーチン大統領との良好な関係を維持しながら西側陣営とロシアとの橋渡し役を果たしてきた。ウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する取り決めでは、国連と一緒に極めて重要な役割を果たしている。スウェーデンとノルウェーのNATO加盟問題をめぐっては、クルド人の扱いをめぐってスウェーデンの加盟に強硬に反対、ノルウェーとの同時加盟を目指したスウェーデンはいまだに加盟が承認されていない。そのエルドアン氏、国際舞台での華々しい活躍とは裏腹に、内政面では強権的な政治姿勢が災いして支持率の低下や反対派の台頭を許している。

その最たるものは金融政策だろう。世界の中央銀行はインフレの進行に伴い政策金利の引き上げに軸足を移した。これに対してトルコ中央銀行は2021年9月に政策金利を19%から14%に引き下げている。当時のインフレ率は20%に迫る勢いで上昇していた。トルコ中銀は大統領の意向に沿って政策金利を連続して引き下げたのである。現在は異常とも言うべき利下げは行われていない。だが、大統領選挙を控えた成長重視の強引な政策運営は変わっていない。そうした中で今年の2月にはトルコ・シリア大地震が発生している。この地震で際立ったのは、成長を重視した違法建築の民家が軒並み倒壊したことである。これを契機に国内での大統領に対する批判が一気に噴出した。大統領に不利とみられていた大統領選挙。開けてみれば事前の予想に反してクルチダルオール氏が劣勢に回っている。トルコ国民は決選投票でどちらに軍配をあげるのだろうか?