【北京時事】先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)では、軍拡路線を歩む中国への対応も焦点となる。中国の習近平国家主席は、昨年10月の共産党大会で「強力な戦略抑止力システムの構築」を掲げ、核戦力増強への意欲を表明。米国との戦力均衡を目指す習政権の不透明な核保有・開発は、国際社会の不信を招いている。
「中国は核保有を認められた5カ国の中で、核兵器の先制不使用を約束している唯一の国だ」。中国の秦剛国務委員兼外相は4月、上海のフォーラムでこう強調した。ロシアのウクライナ侵攻を巡っても、中国は核使用に一貫して反対を表明。「最小限の核戦力」のみを保持する中国の従来方針に沿った姿勢をアピールしている。
その一方で、覇権主義的な動きを強める習政権は、核兵器の近代化と多様化を着々と推進してきた。米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)や、既存の技術では迎撃困難とされる極超音速兵器の開発や実戦配備を急いでいる。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によると、中国の核弾頭保有数は昨年1月時点で350発で、5000発を超える米国やロシアとは開きがある。それでも米国防総省は、中国の保有数が2035年までに約1500発に増える可能性を指摘。台湾への統一圧力を強める中国が、将来的に核兵器を威嚇に用いる懸念もくすぶる。
中ロの原子力分野での協力深化も、西側の疑念を深めている。ロシアは中国に高速増殖炉で使用する高濃縮ウランを提供しており、米国は兵器用プルトニウムの増産につながる恐れがあるとみている。
米ロはこれまで、新戦略兵器削減条約(新START)によって核保有情報を共有してきた。中国にはそうした縛りがなく、核戦力の詳細は公表されない。米国はトランプ政権時代、米中ロ3カ国による核軍縮の枠組みを提案したが、中国は「米ロの軍縮が先決」として拒否。米中間の対立は深まっており、今後も米主導の軍備管理の呼び掛けに中国が応じる可能性は低い。