異次元と銘打った少子化対策の財源をめぐる議論がスタートした。政府は22日、「こども未来戦略会議」(議長・岸田首相)の4回目の会合を首相官邸で開催、財源確保に向けた検討をはじめた。席上岸田総理は「大前提として、消費税を含めた新たな税負担は考えていない」と表明した。G7広島サミットが終了、ウクライナのゼレンスキー大統領が対面で出席したこともあって、議長役を務めた総理の評価は高まっている。この勢いをうけて総理は、通常国会の会期末に解散・総選挙に打って出るとの見方が強い。総選挙となれば消費税を含めた増税は打ち出しにくい。増税しないとなれば財源論は途端に行き詰まる。そこで浮上してくるのが年金や健康保険など既存の社会保障制度を活用した財源づくりだ。読売新聞は「政府は2026年度にも社会保険料を引き上げる方向で調整している」と、断定的に書いている。

財源論をめぐって岸田総理は過去に「歳出の削減を厳しく見直すことが大前提」と発言している。読売新聞によると岸田政権の財源論をめぐるポイントは5点ある。①増税は行わず、給付と負担の全体像を提示②企業を含めて社会・経済全体が連携し、公平に支え合う新たな枠組みを検討③徹底して再出を見直し、保険料負担を最大限抑制④今後3年間の加速化プランが完了するまでに、安定財源を確保⑤将来的に現行制度全体を見直し、「総合的な制度体系」を構築する。少子化対策は単年度では完結しない。まして異次元ともなれば、完成するのに複数年度かかるのは理解できる。だからこそ⑤の「総合的な制度体系」ならびに、そこにいたる過程で必要となる③の「徹底した歳出の見直し」や②の「公平に支え合う新たな枠組み」のイメージが重要になる。岸田総理は消費税の前に「総合的な制度体系」、「徹底した歳出の見直し」、「公平な枠組み」がどのようなものか、そのイメージを明確にする必要がある。

イメージが明確になれば議論しやすくなる。完成形を明確にしろと言っているわけではない。イメージに基づいた議論を盛り上げることで、国民的な合意づくりがしやすくなると言いたいのだ。現時点ではっきりしているのは23年度から25年度にかけた3年間で緊急対応(加速化プラン)を実施。26年度に社会保険料を引き上げ、財源を確保したうえで「総合的な制度体系」を構築するわけだ。その時、日本はどう変わっているのか?女性の働き方はどうなり、社会全体が子育てにどう関わっていくのか。村、町、市、県、国といった行政単位はどうなり、教育や雇用、就労機会はどう変わるのか。異次元の少子化対策という以上、それを実現するために日本はどう変わらなければならないのか?そのイメージがないと総理がいくら「消費税は上げない」と強調しても、国民の共感は得られないだろう。選挙のための異次元対策か、国民のための改革か、さて“どうする”岸田総理。