少子化対策も結局は、長期政権を目指した人気取り政策でしかないのか。財源論を眺めながら、そんな印象が沸々と湧いてきた。「異次元の少子化対策」、年頭の記者会見で岸田総理がぶち上げた意気込みは、やっぱりポピュリズムだったか。薄々感じていたものの、最近ちらほらとメディアが取り上げる財源論を見るたびにその感を強くする。異次元ということばで有権者を引きつけ、増税なしで安心感を与える。通常国会会期末の解散があるかどうかわからない。だがいずれにしても選挙はある。来年の9月には自民党の総裁選が控えている。長期政権を実現するためには選挙に勝つ以外に手はない。キャッチフレーズとして使えるものはなんでも使う。異次元も増税なしも、そのための手段でしかない。ヒトへの投資と大見栄をきる少子化対策、よくよくみるとポピュリズムという実態が浮き上がってくる。
毎日新聞が24日付で報じた財源論によると、政府は2026年度から国民1人あたり月500円程度の負担増を検討しているという。500円は医療保険の保険料と併せて徴収する方式が有力だとある。所得制限を撤廃した新しい児童手当の創設など、異次元の少子化対策には年間3兆円の財源が必要になる。このうちの1兆円をこれで賄う。残りの2兆円は歳出の削減や社会保険制度の見直しなどで捻り出す。今朝の朝日新聞の社説は「子ども政策 これで財源と言えるか」と見出しを立てている。珍しく共感した。そのなかにこんな一節がある。「かつての小泉内閣の構造改革路線は、社会保障費を毎年2200億円ずつ5年間削減しようとしたが、『医療崩壊』との批判を浴びて軌道修正を余儀なくされた」。これが結局はコロナ禍での医療崩壊の伏線になった。そんな事実を無視するかのように岸田政権は、社会保障制度に手をつけようとしている。
それ以上に重大な“猫だまし”がある。少子化対策は24年度からの3年間、「加速化プラン」と称して先行してスタートする。その財源はつなぎ国債でまかなう。最終年度の26年度からは一人当たり500円を負担する。残り2兆円の恒久財源はこの間に検討する。つまり消費税を含めて増税しないのはこの3年間だけ、そのあとも「増税しない」とは言っていないのだ。年金や医療保険の歳出がカットできなければ、その時には増税という選択肢も十分にあり得る。小泉内閣の失敗を繰り返さないためには増税しかないかもしれない。少子化対策が重要であることは論を俟たない。だが新しい政策にはもっと大きな包括的な体系が必要だろう。この政策は長年の課題である構造改革とどう結びつくのか?これも新しい資本主義なのか?よくわからない。その証拠が場当たり的な財源論だ。これではポピュリズムと言われても仕方ない。
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