[モスクワ/キーウ 6日 ロイター] – ウクライナとロシアの両軍によると、ウクライナ南部のロシア支配地域にある巨大なカホフカダムが6日に破壊され、周辺で洪水が発生した。両軍ともに破壊を相手側の責任としている。

ソーシャルメディアに投稿された真偽不明の複数の動画では、ダムの周囲で激しい爆発が相次いでいる様子が映っているほか、破壊されたダムから水があふれ出している。

高さ30メートル、長さ3.2キロのこのダムは、カホフカ水力発電所の一部としてソ連時代の1956年にドニエプル川に建設された。

18立法キロメートルの貯水池を持ち、2014年にロシアに併合されたクリミア半島や、同じくロシアの支配下にあるザポロジエ原子力発電所にも水を供給している。

ロシア国営タス通信によると、今のところ同原発に「重大な危険」はない。ダム周辺の約80集落が破壊の影響を受ける可能性があるという。

国際原子力機関(IAEA)は、同原発に安全上のリスクは当面ないが状況を注意深く監視していると表明した。同発電所の責任者も現時点で原発に対する脅威はないとした。

ウクライナのゼレンスキー大統領はダム破壊を受けて「ウクライナの土地からロシア軍を完全に追放しなければならないことを全世界に知らしめた」とメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した。

ウクライナ軍はロシア軍がダムを爆破したと非難した。一方、ロシア軍が任命した南部ヘルソンの当局者は、ウクライナがダムを数回にわたって攻撃したと主張。水力発電所の水圧弁が破壊されたが、ダムが完全に破壊されたわけではないと説明した。

ロイターはウクライナとロシア双方の発表内容を独自に確認できていない。

ヘルソン州のプロクジン知事によると、ダム周辺地域で住民の避難が始まっている。

同州当局は河岸地域の住民に対し避難準備をするよう指示し「地域の緊急および特別サービスは完全な準備ができており、あらゆる必要な援助を提供する」とした。

ダム決壊による洪水がウクライナの反攻計画にどのような影響を及ぼすかは不明。