[東京 6日 ロイター] – 政府は6日、スタートアップ育成や戦略分野への投資などを柱とする「新しい資本主義」実行計画の改定案を決めた。今後、経済財政運営の指針(骨太の方針)とともに与党審査を行い、6月中旬に閣議決定する方針。分厚い中間層の形成を目指し、「資産運用立国」に向けた取り組みの促進も盛り込んだ。

実行計画は成長と分配の好循環を目指す政府の複数年度にわたる計画で、昨年、グランドデザイン(基本的な考え方)とともに決定した。その後、実現会議で「スタートアップ育成5カ年計画」、「資産所得倍増プラン」、「三位一体の労働市場改革の指針」を取りまとめるなど具体策が進展したことから改訂版として整理し、新たに閣議決定する。

スタートアップ育成では、投資額を2027年度に現在の10倍超となる10兆円規模とする目標を掲げ、官民一体で取り組む。ストックオプション(株式購入権)の活用を広げるため、株主総会から取締役会への委任内容に新株予約権の権利行使の価額や期間などを含めることができるよう法改正を検討する。

グリーントランスフォーメーション(GX)・デジタルトランスフォーメーション(DX)などへの投資では、経済安全保障の観点も踏まえて国内企業立地促進を盛り込んだ。半導体・蓄電池・バイオものづくり・データセンターなどを戦略分野と位置付け、「世界に遜色ない水準で税制面、予算面の支援を検討する」と明記した。

AI(人工知能)については、主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)で合意した「広島AIプロセス」に沿って担当閣僚間で議論を進める。生成AIは基盤的な研究力・開発力を国内に醸成する必要があるとし、そのインフラとなる計算資源の整備・拡充を図る。

量子技術や健康・医療、次世代創薬の研究開発も強化する。健康・医療分野では、認知症の発症・進行抑制・回復に向けた治療薬の開発を目指し、新たな脳科学に関する国家プロジェクトを創設する。

分厚い中間層の形成に向け、資産運用立国に向けた取り組みも進める。資産運用会社や年金などのガバナンス改善・体制強化、国内外の資産運用会社の新規参入の支援拡充・競争促進などを通じ、運用力の向上を促す。具体的な政策プランを新しい資本主義実現会議の下で年内にまとめ、国内外に情報発信する方針。

このほか、実行計画には「構造的賃上げ」と労働市場改革、企業の参入・退出の円滑化、社会課題を解決する経済社会システムの構築など、日本経済の諸課題に対応する具体的な政策が網羅的に盛り込まれている。

(杉山健太郎 編集:田中志保)