ウクライナでまた重大な事件が発生した。ロイターは「南部のロシア支配地域にある巨大なカホフカダムが6日に破壊され、周辺で洪水が発生した。被害は洪水にとどまらない。同ダムは上流にあるザポリージャ原子力発電所が冷却水を取得するための水源でもある。また、クリミヤ半島住民の飲料水の水源にもなっている。真犯人は誰か?まだはっきりしない。いまのところ双方とも相手側が破壊したと主張している。いつもの非難合戦だ。現時点では犯人像を推測するしかない。そんな中で昨夜、報道ステーションに出演した防衛研究所の兵頭慎治政策研究部長は、ダム破壊で被るメリット、デメリットを比較すれば「ロシア側のメリットがより大きそうだ」と分析していた。大規模な反転攻勢を仕掛けようとしているウクライナにとって、地盤の軟弱化をともなうダム破壊はメリットよりもデメリットの方がはるかに大きい。兵頭氏の分析は至極真っ当な気がする。

むしろダムの破壊によってウクライナの反転攻勢に影響があるのか、ないのか?こちらの方が心配になる。気になるザポリージャ原発については、当面心配ないとの報道が支配的。とりあえず一安心か。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は「国際法は民間インフラの破壊を禁じている」と指摘する。ウクライナかロシアか、どちらがやったにせよダムの破壊は戦争犯罪に該当する。ロシアの仕業だとすれば、プーチンにまた一つ戦争犯罪の罪が加わることになる。今朝はもう一つ、“ギョッ”とするニュースがあった。昨年9月に起きた海底パイプライン「ノルドストリーム」の爆発を巡り、米当局がその約3カ月前にウクライナ特殊部隊による攻撃計画に関する情報を入手していたことが分かった、というのだ。ロイターは「米紙ワシントン・ポストが6日、オンラインに掲載されたリーク情報に基づき報じた」としている。

この件はいまも関係国が調査中である。今年の2月には「犯人は米国、しかもバイデン大統領が直接命令した」との内容の報道がなされた。ピューリッツァー賞の受賞者であり、米国を代表する調査報道記者のシーモア・ハーシュ氏が暴いたもの。その後、この情報の真偽をめぐるマスメディアの追随記事はほとんどない。バイデン大統領も偽情報と否定した。内容が内容だけに鮮明に記憶に残っている。それに続くノルドストリーム爆破をめぐる新しい情報だ。しかも犯人はウクライナの特殊部隊とにおわせている。同国の巨大ダム・カホフカの堤防破壊という大ニュースと奇しくも同着だ。これは単なる偶然か?戦争とはいえ、現実はいつも悲惨だ。カホフカ発電所の下流の住民が1万人規模で避難を余儀なくされている。犠牲になるのはいつも庶民だ。ゼレンスキー大統領は頻繁にロシアを「テロ国家」と断罪する。巨大ダムの破壊は、ロシアにまた一つ新しい罪を加えるのかもしれない。