[ロンドン 8日 ロイター] – 米海洋大気局(NOAA)は8日公表した勧告書で、気温の上昇をもたらすエルニーニョ現象が戻ってきたとの見解を示した。太平洋の島々に向かう熱帯低気圧や南米での豪雨、オーストラリアやアジアの一部における干ばつなど、世界各地で今年、異常気象をもたらす可能性があるとしている。 

ここ3年間は、南米沖太平洋の海面水温が低くなり、世界の気温をわずかに引き下げることが多い「ラニーニャ現象」が続いていた。エルニーニョは同じ海域の海面水温が平年より高くなる現象。

勧告書は「5月に赤道直下の太平洋全域で平年を上回る海面水温の上昇が強まり、弱いエルニーニョ現象が現れた」とした。

前回エルニーニョ現象が起こった2016年は、世界の気温が過去最高を記録した。今年と来年は気候変動による温暖化も加わり、記録が更新される可能性がある。

大半の専門家は、NOAAとオーストラリア気象局(BOM)の判断によってエルニーニョ現象の発生を確認する。両者は異なる判断基準を用いており、BOMの定義の方がわずかに厳密だ。

オーストラリアは6日、今年エルニーニョが起こる確率を70%と予想した。

エルニーニョに起因する気温上昇と乾燥の初期兆候は既に現れており、アジア全体で農業従事者を脅かしている。一方で米州の生産者は、エルニーニョによる夏場の雨量増加が干ばつの影響を和らげると期待している。

NOAAの勧告書公表を受け、砂糖とコーヒーの先物価格は8日に急上昇した。

専門家は、強いエルニーニョ現象が起こればインドとタイの砂糖生産が打撃を被り、ブラジルでもサトウキビの収穫に支障が出るとみている。世界第2位のコーヒー生産国であるベトナムのコーヒー生産もリスクにさらされるという。

また昨冬に過去最高を記録したオーストラリアの穀物生産や、インドネシアとマレーシア、タイのパーム油およびコメの生産が打撃を受ける恐れがある。