[東京 27日 ロイター] – 桜井真・元日銀審議委員は27日、ロイターのインタビューに応じ、景気回復や夏のボーナスでの賃上げ持続といった条件が整えば、今年10―12月に政策修正が行われる可能性があると述べた。7月の展望リポートでは2023年度の景気・物価見通しを引き上げる可能性が高いものの、日銀は拙速な政策修正を行わず、データを見極めて着実な政策対応を行うとの見方を示した。

一方で桜井氏は、金利が上昇すると金融機関の保有国債の評価損が膨らむことから、日銀が金利目標を引き上げる場合でも、徐々にしか上げられないとの認識を示した。

足元、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の対前年比上昇率は3%台で高止まり。日銀は年度半ばにかけて伸び率が縮小していくと予想しているが、6月の金融政策決定会合では、賃上げや価格転嫁を巡って「企業行動に明らかな変化が見られつつある」として、コアCPIが伸び率を縮小しても「2%を下回らない可能性が高い」との意見が出ていた。

桜井氏は7月展望リポートについて、23年度のコアCPI見通しは4月の展望リポートの前年度比プラス1.8%からプラス2%程度に引き上げられるとの見通しを示した。植田和男総裁は6月会合後の記者会見で足元の物価の下がり方が「思っていたよりもやや遅い」と述べたが、桜井氏も同じ意見だという。

また、コロナ禍からの景気回復や堅調な設備投資を反映し、景気見通しも引き上げられると予想している。

ただ、桜井氏は7月会合では政策修正はないのではないかとみている。政策修正するとすれば、実体経済が良好に推移することを条件に10―12月ごろが「1つのめどになる」と指摘。このころには、夏のボーナスで賃金上昇が持続しているかも確認できるとした。政策修正のオプションはさまざまなものが考えられるが、長期金利の変動幅の上限を0.5%から0.75%に引き上げるのが最も有力との見方を示した。

桜井氏は海外経済の不透明感に加え、金融システム不安定化への警戒感が日銀の金融政策運営を制約しかねないと話す。

金利上昇で銀行の有価証券運用では外債中心に評価損が拡大した。桜井氏は、日銀が金利目標を引き上げれば貸出金利の上昇につながる一方で、保有国債の評価損が拡大するため、金融政策の「足かせになりかねない」と指摘。日銀は金利を「緩やかにしか上げられない」と語った。

(和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)