注目されたNATO(北大西洋条約機構)の首脳会議で、ウクライナに長期的な安全保障の枠組みを提供することが合意された。ゼレンスキー大統領が会議の前に求めていた加盟への招待状と加盟時期の明示は見送られたものの、「長期にわたってウクライナの領土と主権を守る」ことがNATOの総意として確認された。同時に武器をはじめ長期にわたる支援の提供でも合意しており、実質的にウクライナのNATO加盟が実現したといってもいいくらいだ。これに対してロシアは「西側が提供しようとしている『安全保障』は危険な過ちであり、ロシアの安全保障を侵害し、今後何年にもわたって欧州をより大きなリスクにさらすことになる」(ペスコフ報道官)と警鐘を鳴らす。まるで犬の遠吠えだ。「プーチンの敗北」、そんな近未来が見えてくるようだ。中国はどうするのだろう?逆に心配になる。

加盟への招待と加盟時期の明示を見送る代わりに首脳会議はウクライナに対して、加盟の条件ともいうべき「加盟行動計画(MAP)」の履行を求めないことも決めた。ウクライナはもともと贈収賄など不透明な慣行が横行していると言われている。NATO加盟にはこうした慣行の排除が必要になるが、今回は例外的にそうした要件が適用されない。これはウクライナに対する配慮といっていいだろう。ストルデンベルク事務総長は「加盟への道筋をしめす政治的なメッセージと、NATO加盟国からの具体的な支援という点で、NATOからこれほど強いメッセージが発せられたことは過去においてなかった」と強調している。加えてG7も首脳会議を開き、ウクライナ支援の共同声明を発表した。G7の共同声明には高度な軍事技術、訓練、情報共有、サイバー防衛の提供などが盛り込まれている。

要するに今回の決定はNATOプラスG7によるロシアに対する“最後通牒”といってもいいのではないか。もちろんウクライナ戦争の行方はいまもってはっきりしていない。とはいえ、西側諸国がここまで踏み込んでウクライナ支援を表明した以上、この戦争は西側にとって「負けることのできない戦争」になった。西側の支援を受けてウクライナ軍が戦う第三次世界大戦といった方がいいのかもしれない。終戦がいつになるかわからない。だが、プーチンが指揮するロシアの体たらくを目にすると、ウクライナ軍が負けることはないだろう。となれば、ウクライナ戦争の戦後処理がこれを機にはじまるのではないか。いやすでにはじまっているのかもしれない。ロシアの敗北は東西を隔ててきた国境の“溶融”を意味する。その時旧ソ連邦を構成した国々はどうするのか。それ以上に「戦略的パートナーシップ」関係にある中国はどうなるのだろうか?