ビックモーターの不正事件がメディアを賑わしている。時々行くゴルフ練習場の隣に、広大な敷地を擁する同モータの店がつい最近オープンした。事務棟の壁を左から右に貫く横断幕には、「買い取り実績6年連続日本一」と朱塗られた巨大な看板が掲げられている。この店が開業するまではほとんど関心すらなかった会社だが、練習場で小耳に挟んだ「ブラック企業」の一言が頭の片隅に残っていた。「クルマを売るならビッグモーター」、テレビのCMをみて「あの会社だ」と認識できるようになった直後から、同社の不正問題がテレビや新聞で大々的に取り上げられるようになった。不正の中身は「ゴルフボールを靴下に入れて車体を叩く、ドライバーで傷つけるなどして、修理費用を水増しして保険金を請求していた」(ITmediaビジネスオンライン)というものだ。というわけでこの事件の背景が気になって調べてみた。
テレビの情報番組は内部の証言や元社員の発言などを引用し、例によって不正の数々をこと細かに暴き出そうとしている。これとは別に事件の背景を追求する記事もあった。ITmediaには次の記事が掲載されている。「なぜ『ビッグモーター』で不正が起きたのか、レオパレスや大東建託との共通点」と題したものだ。これがなかなか面白い。筆者はノンフィクション作家の窪田順生(くぼた・まさき)。同氏によるとビックモーターは「団塊ジュニア企業」だという。これに関連する企業には「1973年創業のセブン-イレブン・ジャパン、同年に創業したレオパレス、翌74年創業の大東建託など」がある。76年創業のビッグモーターもこれに近い。団塊ジュニアを授かったファミリーが国内で爆発的に増えて、その恩恵に浴した企業だというのだ。この企業群の特徴は「積極的な経営拡大路線」にある。
だが時代は変わる。少子高齢化が進み、需要は減少の一途を辿る。にもかかわらずビックモーターは拡大路線に執着し、業容拡大にひた走る。当然そのツケは従業員に及ぶ。経営者サイドは過酷ともいうべきノルマを科し、これに応えられない従業員が不正に手を染める。日本企業にはびこる不正の温床といってもいいだろう。窪田氏は「ノルマという概念は戦前に持ち込まれている。現在の日本企業のカルチャーのほとんどは、戦前・戦中につくられたものだ」と解説する。「人口減少が急速に進む『縮む社会』で経済を維持するには、『数』が減っていく代わりに、一つ当たりが生み出す『価値』を上げていくしかない。つまり、生産性向上と賃上げだ」という。その通りだ。だが現実は経営者も従業員も「さらなる数」を求める発想から抜け出せない。問題はビックモーターにとどまらない。「そう遠くない未来、誰もが知るような名門企業で、とんでもない不正が明らかになるかもしれない」(窪田氏)。大丈夫か?日本企業。
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