中国の不動産危機は一向に改善の兆しがみえない。ロイターがきのう報じたところによると、不動産業界最大手の碧桂園の株価が急落した。原因は資金繰り懸念の浮上だという。株式や債券市場では不動産セクター全体に対する信頼感が一段と悪化し、不動産関連企業の株価と債券が暴落した。こうした中で習近平主席はきのう共産党中央政治局会議を招集、マクロ経済政策の調整を強化し内需拡大に注力する方針を示した。会議後に新華社が伝えたところによると、「穏健な金融政策と積極的な財政政策を堅持し、マクロ調整を的確かつ力強く実施していく」(ロイター)と強調したようだ。不動産関連の対策については「適切な時期に調整・最適化する」「地方政府債務のリスクも効果的に予防する」と表明しているが、具体策はない。これでは誰もが「どうなる中国の不動産危機?」と、先行きに対する懸念を強めるだけだろう。
ロイターによると昨日のマーケットの状況は以下の通りだ。「碧桂園の株価は8.7%下落し、1.26香港ドルと8カ月ぶりの安値。不動産管理子会社の碧桂園服務控股株は17.9%下落し7.4香港ドルとなった。碧桂園のドル建て債は額面の5分の1以下に下落した。信用分析会社Ratingdogの創業者、Yao Yu氏は『販売が引き続き低迷し、政策も期待外れな状況が続く中、不動産開発会社が自らの事業で債務を返済することは難しい』と指摘。『投資家はますます悲観的にならざるを得ない』」とコメントしている。碧桂園は、中国の約300都市で数千のプロジェクトを展開する巨大企業。その企業に資金繰り不安がつきまとうこと自体異例だ。不動産業界全体への影響は避けられないだろう。中国本土の不動産開発業者株指数も24日、6.4%下落し今年最大の下げとなった。
ロイターはこの日、香港の裁判所が経営難に陥っている中国恒大集団のオフショア債務再編を巡る判断を9月に示すと表明したと伝えている。中国の不動産危機といえばこの会社だ。同社の負債総額は日本円にして約47兆円にのぼると伝えられている。3月初めに公にした債務再編計画によると、債権者の回収率は22.5%に過ぎない。それでも清算にともなう回収率3.4%に比べると大幅に増えるという。紙屑になるより債務再編した方が得ですよと言っているようなものだ。盗人猛々しいとはこのことだろう。最高の意思決定機関である中央政治局も、不動産業界の深刻な実態は理解しているはずだ。それでも一般論しか打ち出せないところに、不動産業界以上に深刻な中国の懐事情がある。不動産業界に連動して理財商品で資金調達した地方政府のバランスシートには、大きな穴が空いているはずだ。だがその実態は依然として闇の中だ。
<参考>
中国、地方政府の「隠れ債務」明らかにする全国調査開始-関係者<bloomberg日本語版>2023年6月22日 8:28 JST
- 投稿タグ
- 国際政治