先週末、日米韓の首脳会談が米大統領の公式別荘であるキャンプ・デービッドで開催された。会談終了後に発表された共同声明にざっと目を通してみた。声明の書き出しは以下の通りだ。「我々、日米韓三か国の首脳は、日米韓パートナーシップの新時代の幕を開くため、日米韓三か国及びその国民にとって類いまれな機会であると同時に、地政学的競争、気候危機、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争、そして核による挑発が我々を試している歴史の分岐点において、キャンプ・デービッドに集った」と。そして声明の最後は「本日、我々は、日米韓三か国の関係における新たな章が幕を開けたことを宣言する。我々はビジョンを共有し、我々の時代における最大の挑戦を前にしてもひるまず、そして何よりも、日米韓三か国は現在及び将来を通じてこれらの挑戦に共に立ち向かうことができるという我々の信念において結束している」。その意気やよし。誰も反対しない。問題は実行力だ。

今回の首脳会談についてBBCの評価は辛辣だ。「アメリカ大統領にとって外交上の一大成果だが、先行きが確かとはまだ言えない。韓国と日本は隣国同士で、どちらもアメリカの古くからの同盟国だ。ただ、両国が友人同士だったことはない」。皮肉でも誇張でもない。歴史的な事実を紐解いているだけだ。安倍時代に「不可逆的」と大上段に振りかぶった慰安婦解決策は、政権交代と同時に瓦解した。BBCは日韓の「緊張緩和は長続きするのか」と見出しをとっている。それ以上に心配なのは3首脳の支持率だ。中でも岸田総理の支持率は異常に低い。政権を維持できるという見通しもたたない。これでどうして「現在及び将来を通じてこれらの挑戦に共に立ち向かう」と約束できるのだろうか。BBCも日韓関係を問う前に、岸田氏の存続を心配した方がいいだろう。低支持率の原因はマイナンバーでも増税志向の政権運営でもない。長男翔太郎氏の不祥事にみるように、「民意」に背き続ける政権の姿勢にある。

首脳会談には渦中の人である木原誠二官房副長官も出席していた。妻の元夫の不審死に関する週刊文春の記事を読んだ国民・有権者もたくさんいる。そういう人たちはテレビに映ったこの場面をみて唖然としただろう。私もその1人だ。木原氏については風営法違反の事実も指摘されている。だが、そんなことはどうでもいいのだろう。木原氏は影の総理といわれている。「異次元の少子化対策」も「新しい資本主義」も「資産・所得倍増計画」も水面下で木原氏が主導する政策だ。官邸の人事にも同氏の意向が働いているとの解説もある。総理の側近中の側近。その人物が法律に違反しようが、警察権力を操って事件をもみ消そうが、一切関係なし。首脳会談に同席させ、「由らしむべし、知らしむべからず」。主要メディアが何も報道しないことをいいことに、密かに木原氏の復権を目論んでいる。有権者そっちのけだ。権力をチェックしないメディアもメディアだ。すべてが狂いはじめている。