ロイターによるとレモンド米商務長官が「来週、中国を訪問し、政府高官や現地の米企業トップと会談する。商務省が22日明らかにした」。米中関係は一段と対立が深刻化している印象がある。けさも米国務省が複数の中国当局者に対するビザ(査証)発給を制限すると発表している。理由は「中国政府によるチベットの子どもたちに対する『強制的な同化』への対応措置」と説明している。最先端の半導体関連や軍備増強に関係する資材など、米国は中国に対する輸出規制を一段と強化している。7月には米商務省のメールサーバーに中国当局とつながりのあるハッカーが侵入した。それでもレモンド長官は「訪中を中止しない」との意向を示した。今年の2月、ブリンケン国務長官が直前に発覚した偵察気球問題で訪中を中止した状況と比べると、米国の対中姿勢に明らかな変化が伺える。

世界経済の懸念材料を一つだけ挙げるとすれば、中国の不動産不況の先行きではないか。不動産開発大手の恒大集団が米国で破産申請したほか、碧桂園は予定されていた利払いが履行できなかった。中国の不動産業界に関する懸念材料がこのところ目白押しだ。まるで日本の失われた30年を連想させる。中国経済にデフレの足音が忍び寄りつつあると、多くの中国専門家が指摘している。そんな中でブリンケン国務長官、イエレン財務長官に次いで今度はレモンド商務長官が訪中する。ロイターによるとサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、「レモンド長官は今回の訪中で、米国は中国とのデカップリングを模索していないが、国家安全保障を守るというメッセージを伝えるほか、中国との経済関係維持に重点を置いているという点を明確にする」と述べている。

「相手を非難しながら手を差し伸べる」、まるで米国の常套手段ともいうべき外交戦術のようにもみえる。7月に訪中したイエレン財務長官は「4日間にわたり北京で10時間以上政府高官と会談した」(ロイター)。米中の主要閣僚や要人の訪中は、緊張を煽りながら、その裏で関係改善を模索する動きのようにもみえる。対するロシア外交。ウクライナ支援で敵対しながら、致命的な打撃を避けようと配慮している印象がある。一連の外交は高等戦術なのか、単なる目眩しなのか。9月のG20首脳会議ではバイデン大統領と習近平主席の会談が模索されている。デンマークとオランダは20日、対ロシア戦争の支援でウクライナにF16の供与を始めると発表した。これを受けてゼレンスキー大統領は21日、「(これで)ロシアによる侵攻を終わらせることができると確信している」と語った。国際政治では常に確信と確信がぶつかり合っている。バイデン大統領の外交的「確信」はどのへんにあるのだろうか?