東電が24日に始めた原発処理水の海洋放出に反対する中国の、常軌を逸した行動が続いている。習近平政権が日本に対する外交カードとしてこの問題を利用していることがすべての原因だ。中国国内の一部対日強硬派が、日本に電話をかけまくるといった嫌がらせをしている。中国国内では塩の買いだめが勃発するなど、強権国家中国の民意がいかに非科学的か、世界中に曝け出した。個人的には習近平政権の外交レベルが、予想外に低いことを象徴しているようにみえる。それとは別に、この問題を扱う日本のテレビ局が、処理水放出にともなう風評被害を拡散している可能性はないのか?情報番組を編集しているテレビ局幹部はもとよりコメンテーターの多くが、自らが“加害者”になりうる可能性にまるで気がついていない。逆に言えば自分たちの影響力を知らないのだろう。テレビ局の報道姿勢が改めて問われている。

時事通信によると在中国日本大使館は26日、「日本国内の無関係な個人や団体が相次いで中国から嫌がらせの電話を受けた」と公表した。「(これは)犯罪行為だ」と厳しく非難し、法に基づき厳重に処理するよう中国政府に求めたと明らかにした。福島市の木幡浩市長も同日、市内の被害について「確認できているものだけで、2日間で約200件。飲食店やホテル・旅館も多く、多いところは1事業所だけで100件以上も」とフェイスブックに書き込んだ。かかってくる電話の「多くは+86(中国)発信で、中国語」と指摘している。中国国内では塩の買い占めも起こっている。こうした動きを受けて日本のテレビ局は28日朝から、中国の異常な行動を微に入り細を穿って報道している。映像が映し出すテレビ局の影響力は新聞や通信社の比ではない。抗議者がごく一部の特定少数者であっても、まるで大半の中国人民が怒りに震えているかのように見えてします。 テレビ局は何を伝えたいのか。一部の中国人の異常な行動を必要以上に細かく伝えることで、福島をはじめ日本の海産物の風評被害を拡散させる恐れはないのか。コメンテーターの無意味な解説を聞きながら、漁業関係者の杞憂に思いを致さざるを得なくなる。事態の成り行きに懸念を表明しながら、自らが風評被害に加担する可能性に対する自覚が一切ない。ここにテレビ局の情報番組を見ながらいつも感じる不快感がある。逆もまた真だ。民主主義の根幹ともいうべき“木原問題”は一切報道しない。報道機関として「報道しない報道姿勢」があるとすれば、中国の塩の買い占めや日本に対する嫌がらせの電話がその対象だろう。いずれも中国の報道機関の国内向けテーマでしかない。日本のテレビ局は、報道すべき問題は取り上げない。報道不要な問題は熱心に報道する。この報道姿勢の背後にあるのは、「横並び主義」「リスクをとらない報道姿勢」「権力への忖度」。いずれにしても報道という意味では期待できないメディアであることは間違いない。