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UBSのAT1債に強い需要、35億ドル調達 CS買収後初起債

[チューリヒ 8日 ロイター] – スイスの金融大手UBS(UBSG.S)は8日、3月のクレディ・スイス救済合併後初となる「AT1債(その他Tier1債)」を起債し、35億ドルを調達した。

UBSのAT1債は5年物と10年物で、利回りはともに9.25%。販売開始当初の約10%から低下した。それぞれ17億5000万ドルを販売した。

LSEG傘下のIFRによると、UBSのAT1債には260億ドルを超える投資家の強い需要があった。

格付け会社S&Pグローバルは「BB」の格付けを付与した。

この債券は、資本水準が一定の基準を下回った場合、または政府の特別な支援を受けるなどの重大な事象が発生した場合に株式に転換される。S&Pによると、こうした機能はUBSの年次株主総会で承認される必要があるが、クレディ・スイス救済時のように債券が紙くずとなることは回避できる。

アクシオム・オルタナティブ・インベストメンツのリサーチ部門責任者、ジェローム・レグラス氏は「今回のストラクチャーは非常に新しく、投資家の不満に耳を傾けたことを示している」と述べた。

UBSによる買収に当たりクレディ・スイスが発行した170億ドルのAT1債は無価値とされた。銀行の資本が一定水準を下回った際の「緩衝材」としての役割に疑問が生じ、市場が動揺した。

欧州の銀行はその後AT1債の発行を再開したが、市場回復に向けた次の段階としてUBSによる起債が待たれていた。

UBSのセルジオ・エルモッティ最高経営責任者(CEO)は、今回の起債で35億ドルを調達できたことについて、UBSとスイスの金融システムに対する信頼の表れだと表明。

シンガポールで開かれたブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラムで「3月の出来事は特異な出来事であったことが、徐々にではあるが確実に認識されつつある」とし、「人々はAT1がわれわれの資本の非常に重要な要素であることを理解しており、これを利用し続ける信頼性がある」と述べた。