演説する中国の習近平国家主席=15日、米サンフランシスコ(AFP時事)
演説する中国の習近平国家主席=15日、米サンフランシスコ(AFP時事)

 【サンフランシスコ時事】中国の習近平国家主席は17日(日本時間18日)、約6年半ぶりの米国訪問の公式日程を終えた。バイデン米大統領との会談や米企業家らとの交流を通じ、対米関係の安定化と外資の呼び込みを二つの大きな「成果」として国内向けにアピール。ただ、いずれも具体的な進展は未知数で、米中の緊張緩和は一時的なものにとどまるとの見方が強い。

「パンダ外交」継続も 中国主席、米国で示唆

 「中米交流の歴史の中でも温かく感動的な一幕」。中国国営新華社通信は、習氏が出席した15日夜の米企業家らとの夕食会をこう評した。40分近く続いた習氏の演説にはたびたび拍手が上がり、米経済界の重鎮ら約400人から「熱烈」な歓迎を受けたと伝えている。

 中国メディアは米中首脳のやりとりを詳細に取り上げた。バイデン氏が習氏の青年時代の写真に「現在と変わらない」とコメントしたり、習氏が乗る中国車「紅旗」を褒めそやしたりした場面を大きく報道。厚遇ぶりを強調し、米国と「対等」に渡り合う習氏の姿を印象付けようとした。

 しかし会談での合意内容を見ると、軍高官同士の対話再開や合成麻薬「フェンタニル」対策での協力などは、どれも米側が求めていた内容だ。台湾問題を巡る議論は平行線をたどり、中国側が希望する対中制裁関税や半導体輸出規制の緩和に関し、米側の目立った譲歩は示されなかった。

 習氏としては、国内向けに自身の権威を誇示し、米中関係の悪化に一定の歯止めをかけ、外資の対中投資を促す機会を得たことは訪米成果と言えそうだ。中国では長引く景気低迷に加え、外相や国防相の解任など人事面での混乱が続く。今回の訪米は「内憂」に注力するため「外患」をある程度減じる狙いがあった。

 さらに習氏はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場を利用し、各国首脳と会談。日米韓が接近を強める中、岸田文雄首相と会って日中関係の安定化を図ったほか、米国と勢力を争う太平洋島しょ地域のフィジーや、「米国の裏庭」と称される中南米のメキシコやペルーに外交攻勢を仕掛け、「対中包囲網」形成を進めるバイデン政権をけん制した。