来年度の税制改正で、児童手当の対象の拡大に伴う扶養控除の扱いが焦点となる中、政府・与党は高校生などを扶養する親の所得税の控除額を現在の年間38万円から25万円へと引き下げる案をもとに検討を進めることになりました。教育費の負担などに配慮し、控除を縮小してもすべての所得層で児童手当の増額分が上回るとしています。

政府は、来年度から所得にかかわらず児童手当の対象を18歳までの高校生などに拡大する方針で、これに伴い来年度の税制改正では、こうした世代を扶養する親などの所得税と住民税の扶養控除の扱いが焦点となっています。

これについて、政府・与党は控除額の引き下げを検討することになりました。

具体的には
▽所得税の課税対象から控除=差し引く額を年間38万円から25万円に
▽住民税の控除額を年間33万円から12万円に引き下げる案をもとに議論を進める見通しです。

塾など教育にかかる費用が多い年代であることに配慮し、すべての所得層で、控除の縮小によって増える税負担よりも、子ども1人当たり年間12万円の児童手当の増額分が上回るうえ、所得が少ない層ほど実質的な手取りが多くなる設計としています。

一方、与党内には扶養控除の縮小に慎重な意見もあります。

政府・与党は、子育て世帯を対象に
▽「生命保険料控除」や
▽「住宅ローン減税」の拡充なども検討していて
扶養控除のあり方も含め税制面からの子育て世帯の支援について丁寧に議論する方針です。

実質的な手取りは現在よりも増えることに

政府・与党が検討する案では、高校生などの扶養控除を縮小した場合、所得税や住民税の負担は増えますが、年間12万円の児童手当を新たに受け取ることを考慮すると実質的な手取りは現在よりも増えることになります。

例えば、課税対象の所得が195万円未満の場合、9万円余り手取りが増える計算です。

課税所得が
▽195万円から330万円未満だと手取りの増加は8万円余り、
▽330万円から695万円未満だと7万円余りと、
所得が低い層ほど手取りが多くなります。

また、
▽課税所得が4000万円を上回る層でも手取りは3万円以上増える計算で、
すべての所得層で手取りが増える仕組みになっているとしています。

政府・与党は扶養控除を縮小する一方で、年末時点のローン残高に応じて所得税や住民税の納税額を減額する「住宅ローン減税」を子育て世帯を対象に手厚くすることや、家族の死亡や病気に備える生命保険の支払額の一部を課税対象の所得から差し引く「生命保険料控除」について、子どもがいる世帯の場合には拡充するなど、税制を通じて子育て世帯を支援する具体策も検討することにしています。