政府・与党は企業に賃上げを促す税制を強化する=共同

政府・与党は賃上げ促進税制を改正し、給与総額を前年度から7%以上増やした大企業向けの税優遇枠を創設する。子育て支援に積極的な企業などの優遇を拡大し、給与の増額分の最大35%を法人税から差し引く。賃上げ率が高くない企業の控除率は引き下げ、優遇にメリハリをつける。

政府が11日、自民、公明両党の税制調査会に改正案を示し、両党それぞれの幹部会合で大筋了承された。週内にもまとめる与党税制改正大綱に反映する。来春の労使交渉で今春を上回る賃上げを促し、物価上昇を超える賃上げの実現を目指す。

賃上げ促進税制は従業員の給与を前年度から一定以上増やした企業の法人税の負担を軽くする仕組みだ。

大企業向けは給与総額を前年度から7%以上増やした場合は給与の増加分の25%を法人税から差し引く。女性活躍や子育て支援に積極的な企業向けの税優遇枠も設ける。教育訓練費を増やした場合にも控除率を上乗せし、最大で控除率を35%とする。これまでは4%以上増やした場合、上乗せ分も含めて30%が最大だった。

現行では大企業は継続雇用者の給与総額を前年度から3%以上増やした場合は雇用者全体の給与増加分の15%を、4%以上増やしたら25%分を法人税の支払いから減らしている。改正後は3%以上増やした場合の控除率は10%に引き下げる。賃上げ率によって段階的に控除率を高くする。

中小企業が税優遇を受けやすい仕組みもつくる。優遇を受けられる基準を満たす賃上げをしたものの、赤字を計上する企業向けに「繰越控除措置」を新設する。税額控除分を黒字になった決算期に持ち越して使えるようにする。期間は5年間とする。

従来の仕組みでは税優遇は法人税の支払いがある黒字の企業にしか効果がない。

従業員が2千人以下で大企業と中小企業の間に位置する「中堅企業」向けの優遇枠も新たに設ける。給与総額を前年度から3%以上増やした場合は増加分の10%を、4%以上増やした場合は25%分を法人税から差し引く。

女性活躍や子育て支援に積極的な企業向けの税優遇枠は、厚生労働省が女性活躍推進の取り組みに積極的だと認定した「えるぼし」と、子育て支援に積極的と認めた「くるみん」を取得した企業の控除率を上乗せする。教育訓練費を上乗せした場合に優遇を拡大する現行の仕組みと合わせて活用を促す。

賃上げ促進税制の22年度の適用件数は21万件ほどで、減収額は5000億円程度だった。件数、額とも13年度の制度導入から過去最高を更新している。

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