岸田文雄首相(右端)とバイデン米大統領(中央)、韓国の尹錫悦大統領=8月18日、ワシントン近郊(EPA時事)
岸田文雄首相(右端)とバイデン米大統領(中央)、韓国の尹錫悦大統領=8月18日、ワシントン近郊(EPA時事)

 日米韓3カ国首脳会談が8月にワシントン近郊で開催されて以降、3カ国の連携深化が進んでいる。ただ、2024年の米大統領選挙や韓国総選挙の結果が両国の外交政策に影響を与える恐れがある。米国の外交専門家からは、結束を後戻りできないものにするために「制度化」の重要性を訴える声が上がっている。

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 ◇前のめりのバイデン政権

 国際会議に合わせない形では初めてとなった首脳会談では、首脳や閣僚の会談定例化で合意した。さらに日米韓は11月、北朝鮮のサイバー攻撃に対抗するため、高官級の「サイバー協議体」を発足することを決定。北朝鮮の弾道ミサイル発射情報のリアルタイム共有も年内に実施する。

 連携加速の背景には、覇権主義的姿勢を強める中国への対処や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威という3カ国の戦略的関心に加え、「米国が長年望んできた日韓関係の緊密化」(前駐日米大使のハガティ上院議員)の進展がある。バイデン米政権はこれを好機と捉え、一連の「制度化」をできる限り進めようと躍起になっている。

 取り組みの最初の関門は、来年4月の韓国総選挙だ。野党が勝利すれば尹錫悦政権の対日融和政策に影響が出かねない。徴用工問題や慰安婦問題が再び日韓間の火種になる可能性があるからだ。

 戦略国際問題研究所(CSIS)のクリストファー・ジョンストン日本部長は「公式の合意や枠組みの存在は、連携から抜けることによる政治的コストを高める」と「制度化」の意義を強調。韓国の文在寅前政権が19年に日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を通告した後、米国の反対を受けて撤回したのは、文氏が政治的コストの大きさを認識したためだったとみる。

 ◇同盟重視の共有必要

 米国ではトランプ前大統領が来年11月の大統領選で共和党指名争いのトップを独走し、返り咲きが現実味を帯びてきた。トランプ氏は在任中、在韓米軍撤退に言及したり、日韓への米軍駐留経費の大幅負担増を要求したりするなど、同盟関係を軽視した経緯がある。

 大西洋評議会のマーカス・ガルラウスカス局長は、「制度化」によって首脳レベルの政策判断を減らすことが重要だと訴える。長期的な安全保障協力を例に挙げ、「いったん合同演習計画を決めれば、大統領の決断は必要なくなる」と語る。

 ただ、トップダウン重視のトランプ氏が大統領に復帰した場合、「制度化」の深化だけで連携を担保できるかは不透明だ。ブルッキングス研究所のアンドルー・ヨー上級研究員は「日韓は、米国が同盟国なしには安保問題に対処できないとトランプ氏に理解させる理論武装が必要だ」と述べ、結局は同盟の価値共有が重要になるとの見方を示した。