▽「派閥解消」腰砕け 岸田首相、麻生氏押し切れず―自民党<時事ドットコム>2024年01月24日07時04分

自民党の「政治刷新本部」会合で発言する本部長の岸田文雄首相(右から4人目)=23日午後、東京・永田町の同党本部
自民党の「政治刷新本部」会合で発言する本部長の岸田文雄首相(右から4人目)=23日午後、東京・永田町の同党本部

 自民党が23日に示した政治改革に関する中間取りまとめ案は、派閥の解散には踏み込まなかった。岸田文雄首相(党総裁)は岸田派の解散を決めたが、追随したのは政治資金パーティーを巡る事件で立件された安倍、二階両派のみ。首相の指導力に疑問符が付くのは必至で、政権運営の険しさは増しそうだ。

自民、派閥全廃見送り 「本来の政策集団に」―パーティー禁止・政治改革案

 首相は23日の党政治刷新本部で、岸田派解散について「政治改革の先頭に立って議論を進めていかなければならない。その立場を考えた時にけじめは付けなければならない」と述べ、理解を求めた。

 改革案は「派閥の解消」を掲げ「本来の政策集団に生まれ変わる。お金と人事から完全に決別する」とうたったが、派閥全廃には踏み込まなかった。首相は先んじて岸田派解消を打ち出したが、党全体には広げられなかった形で、党内からは「方向性は一体の方が国民から理解される」(菅義偉前首相)と不満の声が漏れる。

 派閥解散の明記が見送られ、党内の評価はさまざまだ。派閥の政治資金パーティーを禁止し、「氷代」「餅代」と呼ばれる所属議員への還元を廃止。人事での働き掛けなども禁じたため、中堅議員は「派閥の機能は失われるも同然だ。もう力は残らない」との見方を示す。一方、岸田派の小野寺五典元防衛相は記者団に「後ろ向きな印象だ」と指摘。刷新本部でも「『本来の政策集団』とは何か」との疑問の声が相次いだ。

 金銭・人事面でメスを入れたが、党総裁選では今後も動向を左右する可能性がある。閣僚経験者は「総裁選はグループ単位で動く。人事でも、推薦名簿をやめて電話で伝えればいい」と、早くも「骨抜き」に言及。党関係者も「数年たてば元に戻る」と口にした。

 野党からは中間とりまとめ案への批判が相次いだ。立憲民主党の岡田克也幹事長は記者会見で「パフォーマンスだ」と断じ、「腰の引けた案だ」と糾弾。国民民主党の玉木雄一郎代表も「中途半端で再発防止につながるのか」と疑問を呈した。野党は通常国会で、首相の姿勢を厳しくただす構えだ。

 こうした中、首相の政権基盤には不透明感が漂い始めている。派閥解消を巡り、政権を共に動かしてきた麻生氏、茂木敏充幹事長との間で姿勢の違いがあらわになった。麻生派中堅は「『岸田の乱』は不発だ」と酷評した。

 首相は麻生、茂木、森山3派について、記者団に「新たなルールに従ってもらう。派閥ではなくなる」と述べたが、両氏にも配慮し「派閥解散」を見送ったとみられ、麻生派の一人は「ぎりぎりの落としどころだ」と評した。

 しかし、自民党は世論の厳しい視線を受けており、党関係者は「存続した派閥の議員は批判を受けるだろう」と選挙に影響しかねないと懸念を示した。