岸田首相がまたまた問題発言をした。まずはきのうの産経新聞(Web版)からの引用。「岸田文雄首相が『共生社会と人権』をテーマにしたシンポジウムに寄せたビデオメッセージに、SNS上でさまざまな意見が寄せられている。日本人が、外国人やマイノリティーを差別していると言及しているため、『第二の河野談話』になりかねないなどと批判する声が噴出する一方、首相は『日本人全員が差別している』とは言っていない」と指摘する声もある。賛否両論ということだろうが、個人的にはきわめてセンシティブな問題に対する配慮が足りないのでは、そんな印象を受けた。LGBT法案を国会でほとんど議論しないまま強引に成立させた首相だ。首相の差別感にもバイデン政権による影響が反映されているのかもしれない。議論になっているのは、法務省などが主催する「共生社会と人権に関するシンポジウム」の開催にあたってのビデオメッセージ(首相官邸ホームページ、5日更新)だ。

再び産経新聞。問題になっているのは以下の発言だ。
《残念ながら、我が国においては、雇用や入居などの場面やインターネット上において、外国人、障害のある人、アイヌの人々、性的マイノリティの人々などが不当な差別を受ける事案を耳にすることも少なくありません》
《近年、外国にルーツを有する人々が、特定の民族や国籍等に属していることを理由として不当な差別的言動を受ける事案や、偏見等により放火や名誉毀損等の犯罪被害にまで遭う事案が発生しており…》《共生社会を実現するためには、他者との違いを理解し、そして互いに受け入れていくことが重要です》
「共生社会と人権」をテーマにしたシンポジウムであり、日本人の差別感に触れるのはある意味当然という気がする。

だが問題は、この発言が首相の常日頃抱いている差別感に基づいているかどうかだ。これも個人的な印象に過ぎないが、岸田首相の普段の言動をみるかぎり人権派というイメージが湧いてこない。広島1区選出の首相は核廃絶に熱心に取り組んでいる。その割に被爆者対策や原爆記念館の活動に積極的に取り組んでいるという印象はほとんどない。故・安倍首相は戦後レジームからの脱却や教育改革など保守派としての理念と、防衛力強化への取り組みなど日頃の政治活動が一致していた。良いか悪いかは別にして、岸田首相にはそれがない。だから、何が“本音”なのかよくわからない。こんなことを言うと失礼かもしれないが、問題発言も官僚の書いた作文のような気がする。その証拠に「・・・の事案を耳にする」、「・・・の事案が発生している」等々、官僚用語が頻繁に出てくる。岸田首相に人権派としての理念、ありや、なしや・・・