ロシアの反プーチン派指導者、故アレクセイ・ナワリヌイ氏の妻ユリヤさんが反プーチン闘争継続を表明した。ロイターによると同氏は19日、EU外相会合で行われた演説の原稿で、「主要な政敵を暗殺した大統領は定義上正当ではない。(3月の)選挙を認めてはならない」と呼びかけた。これまでナワリヌイ氏を裏で支えてきたとされる妻ユリアさん。公式の場に姿を現すことはほとんどなく、その人となりはあまり知られていなかった。そのユリアさんが最愛の夫を奪われたあと闘争継続を表明した。同氏はこれまで「野党指導者の座を継ぐことに否定的だった」という。その人が夫の死を受けて政治活動に本格的に関わる可能性を示唆した。反プーチン闘争は継続できるか、ユリア氏とはどんな人物か、ロイターの配信記事からその実像を探ってみた。

彼女の簡単な経歴は以下の通りだ。「モスクワ生まれで、名門プレハーノフ・ロシア経済大学を卒業。父は著名な科学者ボリス・アンブロシモフ氏。ナワリヌイ氏とは1998年に休暇で訪れたトルコで出会い、2年後に結婚。娘と息子を授かった」。ロシアの典型的なエリート一族の出身とみていいのだろう。「16日に夫の死が報じられてから数時間後にはドイツのミュンヘンで開催された安全保障会議に予告なく登壇、聴衆にプーチン氏の責任を問うと表明した。ミュンヘンではさらにブリンケン米国務長官と会い、亡命中のベラルーシ野党指導者チハノフスカヤ氏とも会談。19日にはブリュッセルで開かれたEU外相会議に出席した」とある。すでに立派な後継者としての役割を果たしている。そんなユリアさんにロシア政府ははやくも監視の目を向けているようだ。

ロシア政府の元顧問セルゲイ・マルコフ氏は19日、「(ユリアさんを)ジャンヌ・ダルク」のような人物に仕立て上げようとしていると欧米の情報機関を非難。やがて忘れ去られるだろうと述べ、「静かな場所」にとどまるよう忠告したとある。反プーチン運動は「重要人物の死亡や投獄、亡命で弱体化している」。ロシアの政治体制は厳しい統制が敷かれ、国内に残っている人々にはほとんど活動の余地がない。ユリアさんは夫の死の直後「(ロシアは夫の)遺体を隠し、神経剤『ノビチョク』の痕跡が体から消えるのを待っている」と激しく非難した。ロイターによるとユリアさんは、「プーチンは夫を殺すことで、私の半分を殺した。私の心と魂の半分を。けれど残りの半分は生きていて、その残った部分が私自身に『屈する権利はない』と教えてくれていると述べた」とある。プーチンはまた一つ悩みの種を抱えたことになる。