Allison Nicole Smith

  • 全ての商業用不動産が同じというわけではない-PIMCOのピア氏
  • 自己資本に対する商業用不動産エクスポージャーの割合が重要
The New York Stock Exchange and surrounding buildings in the Financial District.
The New York Stock Exchange and surrounding buildings in the Financial District. Photographer: NoSystem images/Getty Images

商業用不動産へのエクスポージャーの高い銀行を債券投資家が罰する格好となっている。ウォール街は不動産債務の痛みが金融システムにどの程度広がるかを見極めようと躍起になっているため、銀行の収益がさらに圧迫される可能性がある。

  ドミニク・トゥブラン氏率いるバークレイズのクレジット・ストラテジストの分析によると、商業用不動産へのエクスポージャーが高い銀行は、債券が相対的に高いスプレッドで取引される傾向がある。投資家がより高利回りの証券を求め、金融業界の債券に幅広く投資しているにもかかわらず、スプレッドが拡大しているケースもある。

  バークレイズのトゥブラン氏は電子メールで、商業用不動産関連の不安は、米国の投資適格債市場における発行体レベルのスプレッドの約80%を説明しており、エクスポージャーの低い金融機関の債券は一般的にタイトなスプレッドで取引されていると記述。価格設定の違いは、投資家が債券を買い集める際にいかに選別的であるかを浮き彫りにしており、潜在的な不動産損失のために資金を準備することですでに圧迫されている銀行の資金調達コストを上昇させかねない要因となっている。

Borrowing Costs Have Eased Since SVB Crisis Last March | Financials still trade wide relative to high-grade credit

  インベスコの北米投資適格クレジット責任者でシニア・ポートフォリオ・マネジャーのマット・ブリル氏は、シリコンバレー銀行(SVB)の破綻をきっかけに売りが殺到し、銀行債のスプレッドが拡大した昨年3月を引き合いに出しながら、「当初は誰もがただ全てを売り、考えるのは後回しにした」と指摘。「現在は地域金融機関の中でも他よりも有利なポジションにある銀行があることが分かってきている」と述べた。

  モルガン・スタンレーによると、不採算の商業用不動産市場に偏重したポートフォリオを持つ地域金融機関には、バンクOZK、バレー・ナショナル・バンコープ、ウェブスター・ファイナンシャルなどがある。この3行はいずれも、ブルームバーグニュースからのコメント要請に応じなかった。

  バークレイズは、ウェブスターの商業用不動産エクスポージャーは自己資本の250%余りに相当すると指摘。同行の2029年償還債は、200ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近いスプレッドで取引されている。このスプレッドは1月下旬以来、拡大傾向にある。

  一方、バークレイズによれば、フィフス・サード・バンコープの商業用不動産エクスポージャーは資本の75%未満だ。トレースによると、同社の2030年償還債は4日現在、148bpで取引されており、スプレッドは縮小傾向にある。両行の格付けは同じ「BBB」級。

  パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のハイイールド・クレジットとマルチセクター・クレジットのポートフォリオマネジャー、ソナリ・ピア氏は、すべての商業用不動産が同じというわけではなく、債券保有者はそれに応じて購入する必要があると指摘。「投資適格の金融機関債は魅力的だ。実際、ホテルや産業用データセンターなど、資本構成の上位には魅力的なものもある」と述べた。

  インベスコのブリル氏は商業用不動産をめぐるサイクルが一巡するには数年かかる可能性が高いとしながらも、それは価値ある債券を見つける時間があるということだと話した。「商業用不動産の損失に関しては、どれも一夜にして起こったことではない。市場にはゆっくり浸透していくので、一歩先回りして、十分な準備金を積んでいる銀行を探す必要がある」と語った。

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原題:Banks With Heavy Commercial Property Exposure See Bonds Get Hit(抜粋)