岸田首相はかねてから裏金づくりで失った政治への信頼回復に資するために、政治資金規正法の抜本的改正を行うと機会あるごとに強調してきた。そのための自民党の改正案が先週まとまり、今週から与野党の本格的な議論がはじまる。それを前にしてメディアの世論調査が発表されたが、岸田内閣の支持率に回復の兆しはまったくない。例えば、時事通信が16日に発表した調査(10~13日に実施)によると、内閣の支持率は18.7%で前月に次いで20%を割り込んでいる。不支持率は55.6%だ。支持率は前月に比べて2.1ポイント上昇、不支持率は同3.8ポイント減少している。一見すると支持率が多少改善しているように見えるが、肝心の改正案の評価となると「評価しない」は72.9%で、「評価する」の8.7%を大きく上回っている。そもそも20%割れの支持率など評価の対象外だろう。即刻辞任すべき水準と言っても過言ではない。

読売新聞が19日に発表した世論調査では岸田内閣の支持率は26%で、前回調査(4月19~21日)の25%からほぼ横ばいとなり、7か月連続で2割台に低迷している。不支持率は63%(前回66%)。細かい数字を除けば傾向値は時事調査と同じだ。端的に言って国民はすでにほとほと愛想を尽かしているのだ。いや、怒り心頭に発していると言った方がいい。そんな事態に総理ご本人は気がついているのだろうか。気がついていないだろう。それよりも自民党の信頼回復ができるのは「自分しかない」と思っているのではないか。言葉の端々から伺えるのは「民意に対する完全な誤解」だ。例えば、自民党の改正案に対する総理の評価は以下の通りだ。「実効性のある再発防止策となった。政治の信頼回復につなげていきたい」(読売新聞)だと。議員本人の罰則強化策として、政治資金収支報告書の「確認書」作成を義務づけているが、虚偽記入などがあった場合、「確認が不十分であれば、50万円以下の罰金を科す」としている。「不十分」は悪事を容認する逃げ道だろう。

一見規制強化に見える。だが相変わらず逃げ道は随所に隠されている。それ以上に深刻なのは「非公開」「非課税」という政治家の特権にまったく触れていないことだ。これで「実効性のある再発防止策となった」とよく言えたものだ。国民が現在の政治に抱いている不満は、「政治家の政治活動費はどうして非公開で非課税なの」という疑問だ。自民党案にはそれに対する答えがどこにもない。政権の一翼を担う公明党も、クリーンな政党を標榜する割に有権者の疑問に答えようとしていない。時事の調査で改正案を「評価しない」割合は72.9%に達している。それでもテレビの前で正々堂々と「信頼回復に繋げる」と発言するトンチンカンさ。ここまでくると怒りというよりは、ある種の“哀れさ”さえ感じてしまう。もちろん自民党にも国民の期待に応え得る優れた政治家がいる。だが、そんな人の声は国民から乖離した自民党という政党からはまったく聞こえてこない。

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