ロシア軍によるウクライナ攻撃が熾烈を極める中で、西側陣営では提供武器を使ったウクライナ軍によるロシア領内への攻撃を容認する機運が強まっている。最終的な結論は出ていないが、決定権を握っているのはバイデン米大統領だろう。同大統領はこれまで第3次世界大戦に発展することを恐れ、米国が提供する武器のロシア領内での使用を禁止してきた。ウクライナ戦争はロシアが攻めてウクライナが守りに徹する“不平等戦争”でもある。米国の軍事支援が遅れている隙を狙って始まったロシアの春季攻勢が強まる中で、逆に西側陣営ではロシア領への攻撃を容認する機運が強まっている訳だ。まさに「目には目を・・・」の西側論理だが、果たして“弱腰バイデン”がこれにどう答えるか、世界中が注目している。

対ロシアに対する攻勢を最初に仕掛けたのはマクロン仏大統領ではないか。同氏は今年の2月「西側諸国はウクライナへの部隊派遣を排除すべきではない」と発言、対ロ積極攻勢の口火を切った。この時点でNATO加盟諸国の反応は極めて冷淡なものだった。ところが、ロシア軍の春季攻勢が優位に進む中で5月の初めにウクライナを訪問したキャメロン英外相が、ゼレンスキー大統領と会談した後の記者会見で「英国が提供した武器をどのように使うかはウクライナ次第」、「ウクライナにはロシア領内の標的を攻撃する権利がある」と強調、提供武器のロシア領内での使用が一気にクローズアップされた。呼応するかのようにNATOのストルテンベルク事務総長が「同盟国はウクライナに供与した武器の使用制限の解除を検討すべき時期に来ている」(28日)と発言、この問題が一気に現実味を帯びることに。

口火を切った形のマクロン氏は「ウクライナ攻撃に使用されているロシアの軍事施設に限って容認すべきだ」(29日)と、具体論に踏み込んだ。これを受け欧州歴訪中のブリンケン国務長官は旧ソ連圏の東欧・モルドバを訪れ、親欧米派のサンドゥ大統領と会談。「米国は調整し、適応する」と語った。外電で報道される字面を追っている限り、バイデン大統領の外堀は完全に埋まったように見える。同大統領の決断やいかに。西側が提供する武器がロシア領内で使用されるようになった時、戦局はどのように変化するのだろうか。プーチンは「火遊びだ」(29日)と批判し、「世界的紛争を引き起こす可能性がある」(同)とけん制する。さらに、ロシアの有力政治学者は「ロシア政府は核戦力を世界に『誇示』するための核爆発を検討すべき」(30日)との強硬論を展開。どうやらこの戦争、西側とロシアの双方がチキンゲームにはまり込んだようだ。

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